キャッシュコンバージョンサイクルを使って企業分析してみよう。
第1回 キャッシュコンバージョンサイクルの説明
第2回 CCCを使った比較をしてきたが、
今回は、CCCだけでなく、PL、BSと併せて、「TARGET」「COSTCO」「HOME DEPOT」を分析していきたいと思う。
まずはCOSTCO
◆揺るがない男 COSTCO
コストコは、揺るがない男である。
【揺るがないポイント1】
棚卸資産の割合は一定
仕入債務の割合は一定
増加もしない、減少もしない。
そして、どちらも31日後の月末には
売れて棚卸資産は無くなり(回転日数30.93)
仕入債務の支払いを終える(回転日数30.89)
隙が無く、揺ぎ無く、キッチリと仕上げてくる男である。
他の会社と比較して、仕入債務回転日数の30日は短い。商品がちゃんと売れているから出せる数字だと思うのだが、この金払いの良さは、仕入れ先への価格交渉の武器になるだろう。
安く仕入れるから、安く売ることでき、その結果、在庫が無くなるという好循環を生んでいることが想定される。
【揺るがないポイント2】
売上は増加させ、キッチリ利益出してくる。
配当性向は30%で一定。
株数は一定。
多くの会社が自社株買いをする中
株数も減らさず自社株買いをしない。
周りに流されず、結果を出す、揺るがない硬派な男である。
リスクとしては、利益率(2.21%)の小ささである。現在、アメリカの失業率は3.7%であり、完全雇用状態である。(雇用の流動性が高いアメリカでは失業率4%は、実質、失業が無い状態と言われる。)したがって、人件費・賃金の上昇し、収益を圧迫する可能性がある。
これには、30日と短い在庫回転日数で、機動的に価格転嫁する策を打ち、キッチリ対応して数字を出してくると思われる。
次にTARGET
◆臨機応変に対応する TARGET
ターゲットからは
臨機応変に対応する柔軟さが伺える。
【臨機応変な対応ポイント1】
TARGETのCCCは3社の中で1番小さい。
売上債権の回収日数を減少させたのが大きな要因だが、仕入債権回転日数を少し伸ばしている。その結果、仕入の支払いの1日後には現金が手元に入る状態である。
臨機応変に変化する事で、対応しているように見える。
【臨機応変な対応ポイント2】
売上は一時減少した(カナダに事業拡大して、失敗し撤退した様子。)が持ち直して拡大している。このあたりからも臨機応変な判断・対応が伺える。
また、株数を見ると株数が減少しており、時流に沿った自社株買いを行っているのが判る。このあたりも柔軟な対応が伺える。
リスクとしては、経営判断に柔軟さが見られるため、時流に乗れば好成績になるし、失敗すると・・・という良くも悪くも変動しそうな会社に見える。
次にHOME DEPOT
◆クレイジーでクレバーな ホームデポ
芋っぽい語感からは想像できないような
大胆さと知的さが伺えるホームデポ
【クレイジーでクレバーなポイント1】
棚卸資産の割合が増えている。
積極的に在庫を増やすのは良いけど、大丈夫かな?と不安になる。
しかし、棚卸資産回転日数は着実に減少していて、問題なさそうだと判る。
一見、クレイジーに見えるがクレバーである。
【クレイジーでクレバーなポイント2】
売上は順調に増えている。
販管費は下がって、利益もでている。
配当性向は43.5%と高水準を維持している。
ここでまでは問題ないが、
ここで気になるのが、図の右側、
クレイジーまでの、
株数の激減が意味する自社株買いの多さと、
バランスシートの長期負債の激増である。
図の右下を見ると
10年間で、別の会社のバランスシートのように激変している。
自社株買いについては賛否両論あるが、
単純に言うと
株の配当利子 > 長期負債利子
ならお金を借りて、自社株買いすべきである。
(WACCとかCAPMとか難しい話はあるけど)
ホームデポは配当を4.13%だしているが、長期で資金を調達する場合の金利は現在2-3%ぐらいである。
株で資金を調達するより、長期負債で資金を調達して、自社株買いで株を消却した方が資金効率が良いのである。さらに言えば、金利の支払いは費用になるため、0.2%程度の節税効果もある。
追加でいうと、
利益率 > 株の配当利子 > 長期負債利子
であることが前提だろう。
仮に利益率が1%なのに、金利が2%なら借金しない方がいい。
ホームデポの場合、
利益率10.28% > 配当4.12% > 金利2-3%
株より、借金で資金を調達し、事業を拡大するのがクレバーな戦略である。
とは言うものの、バランスシートを見ると
ここまで大胆に判断し、行動を取るクレイジーさとクレバーさには驚嘆する。
以上、
- 揺るがない男 コストコ
- 臨機応変に対応する ターゲット
- クレイジーでクレバーな ホームデポ
の話でした。
これは、株価を予想・保証するものではありません。情報には誤りがある可能性があります。詳細な4半期決算、割高、割安の指標、市況などを見て、個人の責任・判断で投資を行ってください。
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