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【さらっと 銘柄紹介】Tencent テンセント TCEHY

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【さらっと 銘柄紹介】Tencent テンセント TCEHY

世界最大の売上を誇るゲーム会社。
中国の2台モバイル決済の一つWechat Payを保有する。

Tencent テンセント TCEHYの紹介です。

気になる株をピックアップ、さらっと銘柄を紹介します。

Tencent: テンセント (TCEHY)

  • 業種:Software&IT Services
  • 創立:1998年
  • 本社:中国、深セン市、南山区
  • 従業員:60,860人
  • Marketcap:$488B
  • 会社概要:世界最大の売上を誇るゲーム会社であり、中国の2台モバイル決済のうちのひとつであるWechat Payを保有するテンセント。テンセントは3つの主要なセグメントで運営されている。

VAS(付加価値サービス)セグメントは、主にさまざまなインターネットおよびモバイルプラットフォームでのオンライン/モバイルゲーム、コミュニティの付加価値サービスおよびアプリケーションを提供。

オンライン広告セグメントは、主にディスプレイベースおよびパフォーマンスベースの広告。

その他のセグメントは、主に支払い関連サービス、クラウドサービス、その他のサービスを提供。

では、Tencentの財務諸表を見ていこう。

10年分の財務諸表

  • PL
    • 売上:右肩上がりに成長
    • 利益:売上に応じて増加。
    • 利益率:25.17%と高めをキープ
    • (売上総利益率が下落しているが、販管費も下落。)
    • ROIC:17.73%
  • BS
    • 固定資産が増加。
    • 負債比率は一定。健全性は高い。
  • 効率性
    • CCC:-105.57日 資金繰りが良い
    • ゲームの有料会員、Wechatチャージにより、CCCがマイナスになっていると想定。
  • 配当、配当性向
    • 8.1%低めで安定。
    • 配当は低いが成長しているハイテク企業で配当を出しているのは珍しい。
  • 自社株買い
    • なし

ポイント

業績は順調に伸びている事は分かるが、詳細が分からないので、決算資料から、セグメント毎の売上と利益を抜粋して確認してみよう。

Tencent売上と利益

VASセグメント(ゲーム)

  • 売上は54%を占める。成長は14%と低め。
  • 利益は65%を占める。成長は2%と低め。

(ソーシャルとオンラインの売上は約半分づつだが、ソーシャルが伸びており(23%)逆転が近い。)

FinTech、ビジネスサービスセグメント

  • 売上は26%を占める。成長は37%と高め。
  • 利益は14%を占める。成長は27%と高め。

オンライン広告

  • 売上は18%を占める。成長は16%と低め。
  • 利益は20%を占める。成長は51%と高め。

頭にスッと入ってこないので、この情報をPPMで表してみよう。

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)

プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(略称PPM)は経営資源を最適に配分することを目的として、ボストン・コンサルティング・グループが1970年代に提唱したマネジメント手法。

簡単に説明すると、事業はライフサイクルに従い左回りで問題児、花形、金の成る木、負け犬に変わっていくとされている。

つまり、利益を生まない問題児が、いづれ高い成長率で利益を生み出す花形に成長し、成熟期を迎え、成長はしないが利益を生み出す金の成る木になり、その後、衰退期を迎え、利益を生まない負け犬になるというものである。

ここでのポイントは、事業が衰退する前に、「金の成る木」の資金を、次の「花形」を作るため、「問題児」に投資をするという事である。(負け犬は現金化して、次の投資に回す。)

では、PPMに事業をマッピングしてみよう。まずは売上・利益を整理する。

事業の売上、売上成長率、利益率

この売上の大きさ(円の大きさ)を維持して、成長率を考慮しながらPPMにマッピングすると、次の図のようになる。

事業をPPMにマッピング

ゲームが大きな収益源となっていて、
ゲームはオンラインゲームからソーシャルゲームへ軸がシフトしつつある。

その他の事業も順調に成長中。

  • 「オンライン広告」は利益の成長に貢献。
  • 「FinTech、ビジネスサービス」は売上の成長に貢献。

だいぶ理解が深まったのではないだろうか。

ここで、ソーシャルゲームへのシフトについて、説明を加えたい。(ソーシャルゲームへのシフト:言い換えると専用ゲーム機からスマートホンへ、またはパッケージ販売からアプリダウンロードへ言えるだろう。)

専用ゲーム機が要らない敷居の低さ、空いた時間にできる手軽さからソーシャルゲーム(スマホゲーム)が流行るのは容易に想像できる。

しかし、もう一つ、収益構造に大きなポイントがあるので、解説したい。

ソーシャルゲームへのシフト

製品の価格を付ける際、みんなが、いくらなら買ってくれるかを今までの傾向を分析して、売上が最大になる値付けを行う。

需要と価格を簡単に示すと下記の通り。

需要曲線1

需要と価格の関係を単純化した図。

価格が下がれば、買っても良いと考える人が多いことを表す。

この四角の面積が大きくなる価格を設定し収益を最大化する。

曲線より下の空白部分は機会ロスになる。

そこで、この空白を埋めるために策を打つ。

需要曲線2

クロスセル(関連製品や付属オプション)を促したり、アップセル(高価な代替品・限定版)を促すのは、上手の赤の部分を狙う方法と言えるだろう。

また、売れ残ったものを安売り(ゲームだとベストヒットのような廉価版)するのは、黄色の部分を狙う方法と言えるだろう。

そして空白部分が機会ロスになる。

これが、ソーシャルゲームだと、以下のようになる。

需要曲線3

アイテム課金、従量課金など、ユーザが利用したい状況を作り出しユーザが利用した分だけ、料金を払ってもらう事で、収益を最大化することができる。

この方式だと、機会ロスが発生しない

(無課金で利用するユーザも多いが、利用者の母数が増える事で、課金される可能性が増加する。)

因みに、Swrve社の2019年のレポートによると、上位の10%のユーザが64.5%の売上を占めるらしい。

参考資料:Swrve社の2019年のレポート

つまり、ソーシャルゲームの需要曲線の実態は、下記の様な形と考えられる。

需要曲線4

上位の10%のユーザが64.5%の売上を占めるイメージ図。

ソーシャルゲームは、

上位ユーザの購買意欲をいかに掻き立てるかが重要だったりする。

敷居を低くして、購買意欲と支払い能力が高いユーザに高額を払って貰うという方法は、複数の料金プランを用意するSaaSのサブスクリプションサービスのマーケティングに似ている。

参考文献:ゲーム産業講義

非常によく纏まっている資料でおすすめです。

リスク

専用ゲーム機(およびパソコン)を対象としたパッケージ製品より、開発費が少なく、ヒットすれば利益率が高そうなソーシャルゲーム。実態は、様々な会社・個人がゲームを作っており、参入障壁が低いレッドオーシャンである。

それに対してのテンセントの方針は、「買収・提携」と「同類のゲームを作りオリジナルを超える」という方向性である。少し狡さを感じるが、大企業が取るべき戦略としては妥当。といったところだろうか。

1999年、テンセントは、QICQというメッセンジャーアプリをリリースしている。このアプリは、AOLのICQと似ている事から知的財産の侵害で訴訟されそうになっている。これを回避するため、TencentQQという名称に変えている。この様に、後追いでの模倣を繰り返していたことから、Copycatと呼ばれたりもする。

模倣をしていることを聞かれて、CEOのポニー・マーは「インターネット業界は模倣されてなんぼ。我々も早くシリコンバレーに模倣される立場になりたい。」という旨の事を語っているらしい。

TencentQQのマスコットはペンギンだったりするのだが、ファーストペンギン※という状況ではなさそうである。

※集団で行動する群れの中から、天敵がいるかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛びこむペンギンの事。

とは言っても、大抵の発明は既にあるものの組み合わせだったりもするし、昔は日本も海外のものを模倣していたとも聞く。あまり、責められるものでもなかったりもする。

リスクとしては、過去の知財関係で訴訟されるリスクがあるのかもしれない。

近年は、任天堂等、大手の企業とライセンス提携をしていたりもするので、知財関係も整備されていくだろう。

(まとめ)

テンセントは非常に高い成長率、利益率を誇る。ゲームがコアビジネスという事もあり、ゲームの当たり外れに左右されそうな印象があるが、過去の業績の推移を見るとそれほど大きく変動はしていないように見える。ソーシャルゲームへのシフトも順調であるし、「オンライン広告」や、「FinTech、ビジネスサービス」の事業も順調に成長している。

足元では大型ゲームタイトルの行方アメリカとの貿易戦争の行方(知財関係)が気になるが、長期では今後も成長が期待されそうな企業に見える。

1/16時点
TCEHY:PER 39.57倍 Forward PER 29.76倍
値上がりを保証するものではありません。投資は個人の責任で行ってください。
4半期決算、PER、市況、ニュース、チャートの確認をお勧めします。
(PERは15倍(~25)以下で買いたいが、良い株は高い…)

(おまけ)ゲーム市場の成長予測

参考:Newzoo

Newzooがホームページで一般公開している情報を整形して作成したもの。

(おまけ)Mirriad

出典:YouTube Mirriadのチャネル

Tencentとの2年間の独占契約を発表したMirriad。

動画中に広告を差し込むことができる。

すごい!

(おまけ)内向的な社風

テンセントのIRは、非常に味気ない資料になっている。内向的であまり表に出てくることを好まないポニー・マー(CEO)の性格を表しているのだろうか。

それと比較すると、シャオミ(総合家電メーカー)の決算発表は完全に吹っ切れている。

シャオミは決算をアニメソングに合わせて発表している。

テンセントもこれくらい吹っ切ってほしいものである。

(おまけ)シナジー効果

個人的な仮説だが、決算資料から感じられる冷たさは、ゲームソフトの独立性と、良いゲームを作った人・部署が評価されるような事業部間(開発チーム間)の競争が、この会社の雰囲気を作っているようにも思われる。

連携とかシナジーが感じられない

(実態は違うのかもしれないが…)

例えば、IRのプレゼンテーション資料

(カラーが使われている数少ない資料の一つ。)

出典:IR資料

色々な事業が互いにシナジー(相乗効果)を生み出して、事業が成長していくことを示した図。

しかし、よく見てほしい。

出典:IR資料

歯車を赤の矢印ように回転させると、
紫の矢印の部分で矛盾(逆向き)が生じ、
この歯車は回らないのである。

結果的には、
回転(連携)でシナジーを生み出す図ではなく、
互いに邪魔し合うモデルを表している。

事業間の独立性・競争みたいな、
テンセントの社風があらわれているように思う。
(完全な、こじ付けである。)

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