SCM(サプライ・チェーン・マネジメント) カイゼン・組織力の強さ
SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の強さは組織力の強さだと考えている。
- なぜ、SCMが組織力の強さを示すのか?
- 組織力の強さは、どう見れば良いのか?
説明してみたい。
(個人的見解・認識であり、誤解があるかもしれません。)
まずは、全体像を把握して貰うために、以前、説明したマイケル・ポータのバリューチェーンのフレームワーク(リンク)を使って説明を始めたい。
経営する上で主要なシステムとしてERP、SCM、CRMがある。
この3つのシステムとバリューチェーンの関係性を図に示すと以下の様になる。(多少、範囲の違いはあると思います。)
バリューチェーンとERP,SCM,CRMの関係
ERP:Enterprise Resouse Planning
エンタープライズ・リソース・プランニング
人・物・金を管理し、全体最適な資源の配分を計画するもの。
SCM:Supply Chain Management
サプライ・チェーン・マネジメント
物の流れに特化し、企業の枠を越えて全体最適な供給を管理するもの。
CRM:Customer Relationship Management
カスタマー・リレーションシップ・マネジメント
顧客との関係性に特化し、マーケティングに活用するもの。
この3つは以下の指標で評価される。
ERP・SCM・CRMの評価
ERPは会社全体の収益性を下記で評価。
- ROE
- ROIC
(上記をデュポン分析して評価する場合もある。)
SCMは効率性を下記で評価。
- 棚卸資産回転率
- ROA
CRMは売上(見込み)として下記で評価。
- 売上
- 会員数の増減
- MAU(Monthly Active User:月間アクティブユーザ)
- DAU(Daily Active User:日間アクティブユーザ)
つまり、全体の中で、SCMは物の流れに特化して全体最適化し、効率性を向上するシステムである。
では、SCMについて詳しく見ていこう。
SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)
SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)は供給連鎖管理と言われ、サプライヤーから顧客までの調達・生産・物流・販売プロセスのボトルネックを解消し全体最適化し、物流の経営効率を高める管理手法である。
(販売機会を最大化するには、大量の在庫を抱えるのが答えだが、需要の変化による売れ残りリスクを考えると在庫は少ない方が良い。このように各要素のバランスを取り全体の経営効率を最大化する試みとも言える。)
具体的には小売店のレジ(POS)で入力された販売データの推移から、今後の売れ行きを予測し、リードタイム(店舗に届くまでの時間)を逆算し、サプライヤーに発注し、生産し、出荷して、小売店の在庫を切らさない様に補充する仕組みである。
もう少し詳しく発注の仕組みを見てみよう。
在庫の発注の仕組み
基本的な在庫の発注の仕組みは上記の通りである。
- ①在庫推移を元にして(赤の実線)
- ②リードタイム※を加味して(黄色)
- ③在庫切れを予測し(赤の破線)
- ④適切な量の発注を行う。(赤の丸)
(※発注から店舗に届くまでの時間)
これを、店頭に並べる商品毎に管理する必要がある。
更に、サプライヤーへ発注する部品数で言えばそれ以上になる。
(商品が切れれば、補充すれば良いと言うものでもなく、経営効率を高めるためには、費用対効果(利益と輸送コスト)が最大になるタイミングで、まとめて補充することになるため、他にも考慮すべき事項は多い。)
基本的な仕組みは上記の通りだが、実際は単純ではない。
在庫の発注の仕組み(実際)
在庫の推移は、「天気・季節・イベント・祝祭日・流行り廃り」に影響され、綺麗に推移する物ではなく、予測は複雑になる。例えば、図のように(赤の矢印)、発注後に急激に売れ行きが伸びた場合は、在庫切れになる。
(EDLP:エブリデイロープライス(いつでも安売り)の戦略は、広告費の削減や、顧客に選択させるコスト優位性を与えるだけでなく、特売等のイベントを無くして、販売予測を安定させて無駄な在庫を抑えていたりもする。)
ここで、図の⑤安全在庫が重要になる。先ほどは説明しなかったが、不測の事態でも在庫を切れない様に、在庫に余裕を持っておくのである。
逆に言うと、予測が正確でない場合は在庫を多く抱える必要がある。
それ以外にも、リードタイムが長い場合は在庫を多く抱える必要がある。
つまり、在庫が少ないと言うことは、予測の正確性・リードタイムの短さを表しているのである。
リードタイムのカイゼン
リードタイムは、創意工夫・カイゼンの積み上げで短くする。
例えば、下記の様なカイゼンを行いリードタイムを短縮する。
- 物の配置を変えてムダな工程を無くす。
- 動線を変えてムダな人・物の動きを無くす。
- 機械の振動を抑えて不良品を減らす。
- 配送ルートを最適化して配送時間を短縮。
例えば、コストコが、トラックから降ろした商品を重機で運んだままのスタイルで販売しムダな工程を省く(効率化&コストダウン)のも、その一例である。
(コストコの店舗の通路が広いのは、大きなカートを持ったお客がすれ違えるようにと言うだけではなく、重機が通れるため、だったりもする。)
(まとめ)
これまでの説明を整理すると下記の通り。
棚卸資産回転率が安定 or 高い(=棚卸回転日数が短い)
→市場動向を正確に把握している。
→需要予測、販売予測が正確である。
棚卸資産回転率が向上(=棚卸回転日数が短縮)
→常に創意工夫しカイゼンする文化がある。
以上より、
SCMの強さ(棚卸資産回転率、ROAの指標の良さ)は、組織力の強さを示していると考える。
(おまけ)
SCMでは、下記の背反性を持つ事象の最適化し経営効率を高めることになる。
- 販売機会の最大化 ⇄ 在庫の最小化
販売機会を失わないため、大量の在庫を抱えると、場所のコストが嵩むし、売れ残りの大きなリスクを抱えることになる。需要の変化への機動性も失われることになる。
- 販売機会の最大化 ⇄ コストの最小化
販売機会を失わないため、リードタイムを最小化すると、頻繁な配送が必要になり、配送コストが嵩む。
(おまけ)
SCMについて理解している範囲は、まだまだ狭くて、実際は、もっと複雑で泥臭い物だろうと思っている。棚卸資産回転率がカイゼンしている企業を見つけると、この企業は何をやってカイゼンしているのだろう?とワクワクします。(なかなか、この気持ちは伝わらないだろうけど、少しは伝わったかなぁー)
(おまけ)
「サイバーマンデー 、中国の独身の日」のような大々的なセールは、物流のトラフィックを一時的に増大させるイベントである。
AmazonやAlibabaの物流センターはおおいそがしである。
このようなイベントを実施すると、この特異日のためだけに、オーバースペックの物流施設を備えておく必要が発生する。効率化・コストダウンの観点から見ると、このようなイベントはせずに、需要を安定させた方が良いのではないかなーと思ったりする。
しかし、もしかしたら、AmazonもAlibabaも需要は今後も益々拡大する未来を見ていて、まだまだオーバースペックと考えていないのかもしれない。
AmazonもAlibabaも販売プラットフォームを法人に対して提供するビジネス形態を拡大しているが、この形態だと、このような大きなイベントでも、在庫リスクがなく手数料だけ稼げるので、美味しいポジションだなと思う。
(おまけ)
米中の貿易戦争で、コストを抑えるために、輸入先の変更する企業が多いけど、大変だろうなー。
(おまけ)
醤油とマヨネーズの安全在庫を常に1個持っています。
(おまけ)
SCMの強さは、組織力の強さ。
服装のみだれは、心がみだら。
(おまけ)
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リードタイムにカイゼンが見られませんが・・・
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