【2020年4月 ささっと決算】Alibaba
対象企業:Alibaba
対象企業はアリババです。
Earning Callを片っ端から力技で確認。
◆Alibaba アリババ
まずは、決算の数字をグラフにして、いくつかのポイントを説明したい。
出典:IRよりグラフ作成 売上の推移(2017/12-2020/3/31)、売上割合(2020/3/31)
決算のポイント
- 全体の売上は22%増。
- 中国内の小売りが売上62%を占める。
- クラウドが売上11%を占める。
- 独身の日、年末商戦で12月期の売上は突出する傾向がある。
- COVID-19の影響で成長が鈍化。
- Freshippo,Tmall SupermarketがYoYで88.4%成長。しかし、前期からは伸びていない。
- クラウドが58.1%成長。順調に伸びている。(現状、投資先行で利益は出ていない(利益率-1%)が、Amazon、Microsoftを見ていると、利益率が良い部門のはずなので、今は種の仕込み時だろう。)
因みに、利益率の推移は下記の通り。
まぁ、事業者を支援している(後述)ので、今期の利益率が低くなるのはやむ無しだろう。
ざっくりと理解したところでEarning Callを確認してみよう。
ビジネス概況
- デジタル経済全体のGMV(流通取引総額)が1兆ドルを達成。
(5年前から掲げていた戦略的マイルストーン。) - 昨年約600万ドルだった中国の小売総売上高の6分の1。
(まだまだ大きな成長の可能性があると見ている。) - マーケットプレイスのアクティブ消費者数は7億2600万人に達し、前四半期比で1500万人の純増。
- リテールマーケットプレイスのモバイルMAUは、8億4,600万人に達し、2019年12月と比較して2,200万人増加。
- 年間アクティブ消費者数は7億8,000万人(7億2,600万人の中国小売マーケットプレイスを含む)に達した。中国人の2人に1人が私たちのプラットフォームで購入していることになる。
- 現在の年間アクティブ消費者数7億8,000万人は、中国の農村部(未発達地域)での人口普及率が45%に過ぎないため、まだまだ成長の余地があり、アリペイと共にこれらの地域で人々を消費者に変えるデジタル化戦略を推進する。
新型コロナウイルスと各セグメントの状況
- 1月23日以降の封鎖措置により、1月下旬から2月にかけて大規模な経済混乱が発生。国内Eコマース事業にも影響を与えた。
- 3月9日には、武漢のある湖北省を除いて全国的に物流が完全に回復。武漢では4月8日に、10 週間続いた封鎖が解除され、多くの国民が通常の生活に戻り始めた。3月以降、中国の小売市場では健全な回復が見られるようになった。
- デジタルコラボレーションプラットフォームDingTalkは、リモートワーク、学校で使われている。DingTalkの1日平均(営業日)のアクティブユーザは、3月に1億5500万人と大幅に増加。オフィスや学校の再開で、ピーク時の水準から下がったものの、1億DAU以上を維持し、4倍増加。
- 越境マーケットプレイスであるAliExpress GMVは、2020年2月から3月にかけて、サプライチェーンと物流の混乱の影響を受けた。4月から一部回復の兆しが見えるが、先行きは不確実性がある。
- ローカルコンシューマーサービス事業の売上高は、COVID-19の影響により、前年同期比8%減。4月に封鎖措置が緩和され、飲食店の営業再開や中国での復職者が出始めたことで、フードデリバリーのGMVが前年同期比でプラスに転じた。
- アリババクラウドは急成長中。動画コンテンツの消費拡大やリモートワークや学習の普及に牽引されて急成長。また、クラウド・コンピューティング・インフラと固定データ・ビジネスは、企業が迅速に業務や生産を再開する上で重要な役割を果たした。パンデミックは、企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させると考えている。公共部門を含むすべての産業が、技術インフラをクラウドに移行することを選択するだろう。今後も、コスト効率と投資収益率を確保しながら、オリジナルコンテンツや独占コンテンツの制作・配信に注力する。
- 日用消費財と家電カテゴリーの旺盛な需要があった。一方、アパレルやアクセサリー、ホームファニッシング、自動車部品などはマイナス成長となった。4月に入ってから、Tmallのオンラインの商品(現物)のGMVは力強い成長を見せ、大きく回復し、5月に入ってからはさらに改善。化粧品はマスクの影響で売れ行きが悪い。
- 米国や先進国の市場では、SaaSやエコシステム全体の開発者はすでに成熟しているが、中国では開発者のエコシステムはまだ始まったばかりで、アリババは開発者とパートナーを組み、中国で非常に強固なエコシステムを共同で構築していきたいと考えている。
COVID-19の影響に対する支援について
- アント・フィナンシャルとともに、寄付、補助金、技術支援で約34億元を拠出。
- 手数料の免除、手数料の削減、加盟店への物流補助金の提供等。
- Ant Financialやその他のパートナーと協力して、加盟店に流動性を提供するための運転資金を提供し、優遇金利での1年ローンを促進。
- 1月に設立した10億元の特別基金を活用して、中国のパンデミックの影響を受けた地域への医療品や関連物資の調達を実施。
- 物流子会社カイニアオは、世界各地への医療品の無料配送を実施。
- 生鮮食品・食料品チェーン「フレッシッポ 」では、営業停止期間中も200店舗以上の営業を継続。サプライチェーンと連携して、価格の値上げを行わないことや、棚に十分な在庫を維持することを約束。
- 中国の550以上の病院にAI技術を提供し、肺CTスキャン時のCOVID-19診断の迅速化と効率化に貢献。アリババ財団は、ジャック・マー財団、ジョー・アンド・クララ・ツァイ財団との連携により、150以上の国と地域に2億台以上の個人用保護具、検査キット、人工呼吸器を寄贈。
- 2020年4月「2020 Spring Thunder」イニシアチブを発表。
- 輸出志向の中小企業が、alibaba.comやAliExpressなどの国際・卸売・小売マーケットプレイスを通じて新たな市場に進出するのを支援。
- デジタル化された製造クラスターを発展させ、中国の農業部門のデジタルトランスフォーメーションを加速。
- Ant Financialやパートナーと協力し、中小企業の資金調達の課題を緩和。
The Holding Foreign Companies Accountable Actについて
- 米上院は5月20日、米株式市場に上場する外国企業に経営の透明性を求める法案、外国企業説明責任法(Holding Foreign Companies Accountable Act)を可決。
- 持ち株外会社責任法は、会社が公開会社会計監視委員会(PCAOB)の監査に3年連続して遵守しなかった場合、その会社の証券が米国の証券取引所に上場されることを禁止するもの。
- 中国の証券規制当局であるCSRC、SEC、PCAOB、及び4大会計事務所で、継続的な対話が行われている。
- アリババの財務諸表は米国会計基準に基づいて作成されており、1999年の創業以来、PwC香港の監査を受けている。PwC香港は世界的なPWCファームの現地法人であり、監査基準は米国のPwCナショナルオフィスが監督している。
- アリババの財務諸表の完全性は、それ自体が物語っている。
- 当社は2014年からSECに提出しており、透明性の高い水準を維持している。毎年、私たちはPwCからの財務諸表の意見を受けている。
- 信頼は当社のコアバリューの一つであり、すべてのステークホルダーとの信頼関係を構築するためには、透明性と誠実さが不可欠。私たちは一貫して長期的な事業の成長を目指し、適用されるすべての法律のコンプライアンスを維持し、お客様、従業員、投資家のために価値を提供してきた。以上のことから、米国証券取引所の有価証券を購入する投資家を保護し、透明性を高めることを目的とした法律の遵守に努める。
まとめと補足
中国は、いち早くCOVID-19の影響から回復を見せているが、政府の対応が悪かったことや、ラッキンコーヒーの不正会計(ナスダックから上場廃止になる様子。)があり、アメリカの中国企業に対する風当たりが強くなってきている。また、アリババの大株主であるソフトバンクが赤字を補填するため、株を売却したりと、風向きも悪い。
一方で、明るいニュースもある。中国株をアメリカから締め出そうという過激派の意見は以前からあったたため、最悪の事態のダメージを軽減するために、2019年11月15日にアリババ株は香港に上場(再上場)している。そして、最近、ハンセン指数の規制改正があり、8月ぐらいからアリババ株がハンセン指数に組み込まれる可能性がでてきている。これが確定すれば、一定の買いは入りそうである。
個人的な考えだが、2019年の12月ぐらいの時点では、FreshippoとTmall Supermarketが絶好調で、ここが次の成長エンジンとなることを確実視していた。オンラインとオフラインを融合させ、配送センター兼ねる店舗を各地に出店して売上を伸ばして行くという分かり易く、実現性の高い成長スキームに見えた。
しかし、その直後にCOVID-19の問題が発生し、状況が不透明になってしまうのだから、世の中分からないものである。COVID-19の影響から回復して、元の様な力強い経済成長に期待したい。
以前からGoogle Trendsでクラウドに対する中国の検索数の増加が、他の国と比較して遅い事を確認していたが、今回のEarning Callの発言からも、やはり、中国のSaasクラウド関連のビジネスはこれから発展していく段階にあるように思われる。
アリババは、今回のパンデミックで、多方面に支援し、人々の生活を支えている。短期的には利益率が低くなるだろうが、長期的には、この様な人々の信頼を勝ち取る対応が、高いロイヤリティを生み、更に人々の生活に浸透していくことで、更に強いビジネスになって行くだろう。
おまけ
緊急事態宣言を受けて、友人は在宅ワークをしている。
Zoomを使って、海外の人と仕事の打ち合わせしているらしい。
その際、打ち合わせ後に、カメラを切り忘れて、パンツ姿を情報漏洩してシマッタらしい。
このあたり、Zoomのセキュリティ対策が待たれるところである。
(画像認識でパンツを透明にするとか。)
ウォルマートでも上着の売れ行きが良いという話も聞くし、
在宅ワークやマスクの影響で化粧品は売れなくなるし、
通勤しなくて良くなったのに、ギリギリまで寝ていて寝坊した人の話も聞くし、
水は低きに流れ、人は易きに流れる。
パンデミックの間、多くの高齢者が生活必需品を買うためにオンラインに移行したらしい。
通常状態に戻ったら、大半の人の生活は元に戻るかも知れないが、
ライフスタイルが変化し、元に戻らないものもあるだろう。
漏洩した情報が、戻って来ない様に・・・
という感じで締めてみました。
締まった。というよりは、やってシマッタ話でした。
(Zoomの銘柄分析に、このセキュリティの件、追記しておこう。)
アリババの銘柄分析の記事はこちら

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