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Shopify と Bigcommerce の違いは何か?

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Shopify と Bigcommerce の違いは何か?

投資視点の比較ではあるが、サービスを比較検討している人にも参考になるので、見て欲しい。

今期のShopifyBigcommerce売上成長には大きな差がある。

この違いは何に起因するものなのか?調べてみた。
また、収益構造の違い、経営戦略の違いにも踏み込んで考えてみた。

では、違いを見ていこう。

Shopify と Bigcommerceの収益の違い

前年同期比の売上を見ると、
Bigcommerceの33.3%増加に対し、Shopifyは97.3%増加している。

この違いが何かというと、付帯サービスの収益の差である。

売上を分解すると、両者ともに実はサブスクリプションは、それ程伸びていない。付帯サービスが伸びているのだ。

サブスクリプションの売上増加

    • Bigcommerce 19%増加
    • Shopify 28.3%増加

付帯サービスの売上増加

    • Bigcommerce 74.3%増加
    • Shopify 147.9%増加

つまり、Shopifyの方が店舗の売上成長の恩恵を受けやすい収益構造になっていて、店舗の急激な売上成長がShopify と Bigcommerceの売上成長の違いとなって表れたのだ。

単純化するとこれに尽きるが、もう少し詳しく状況を見ていこう。

サブスクリプション売上、低調の謎1

COVID-19の巣籠り需要を受けて、他のSaas企業が売上成長40%以上という好業績を出す中で、なぜサブスクリプションの収益が19%~28%増と低調なのか不思議に思った人もいるはずだ。(十分に好業績ではあるが、他と比較すると少々見劣りする。)

これは、COVID-19で困っている小売業者の支援策として、両者ともに90日間のフリートライアル期間を設けた事により、まだ収益に計上されていない見込み顧客がいるためだ。ShopifyはQ1からQ2の間に「新規店舗開設数」は71%増加していると述べている。
(注:店舗数71%増ではない。)

90日フリートライアルを5/31期限で、元の14日に戻しているので、最大で8/31までは、この影響を受けることになる。つまり、9月末締めの次の4半期決算には、緩やかに新規店舗の増加が反映されることになる。しかし、新規にお店を開設した人々が定着せずに解約する可能性もあるので、手放しで楽観視はするべきではないだろう。今後は定着率を高める事が勝負のカギとなる。

サブスクリプション売上、低調の謎2

収益の差は、店舗の売上に連動する付帯サービス差と述べたが、もう少し詳しく見ると、Bigcommerceのサブスクリプションの売上増加率の低調が気になる

サブスクリプションの売上増加

  • Bigcommerce 19%増加
  • Shopify 28.3%増加

通常、規模が小さい企業の方が成長率が高くなることが多い(注)のだが、
Shopifyの1/20売上規模であるBigcommerceの方が成長率が劣っている

(注:1億の売上が増えた時、「1億+1億=2億」は2倍だが、「10億+1億=11億」は1.1倍にしかならず、一般的に規模が小さい程、成長率が高くなりやすい。)

では、なぜShopifyの方が成長率が高いのか

ここからは仮説となるが、次の図でコストを見てみよう。

軸のメモリを同じにして、BigcommerceとShopifyの「営業及びマーケティング費用」「研究開発費」を比較すると、上図のようになる。

Shopifyの方が「営業及びマーケティング費用」を8.62倍「研究開発費」を11.74倍の費用を費やしている。これが、サブスクリプションの売上の成長率の違いになっている可能性が高いと推察される。

サービス内容も価格帯も、横並びに見える状況で、8.62倍の「営業費、及びマーケティング費(広告費)」に勝てる方法を思いつけたら天才的な商才の持ち主であろう。実際、私もShopifyの広告を多く見かけたし、個人的な感想としては、Shopifyの方がデザイン性や細部が洗練されていてコストがかけられているように見える。

ただ、Bigcommerce側にも戦略があるので、そのあたりは後述したい。

【参考】料金プラン


出展:Bigcommerceホームページ


出展:Shopifyホームページ

料金プランは使える機能や取引規模によって、区分されている。

  • Bigcommerceは、月額$29.95から、$79.95、$299.95。
  • Shopifyは、月額$29から、$79、$299。

(Bigcommerceの$0.95が気になる。なんでチャレンジャーが料金を高くしてるんだ…)

細かく言うと、同時に使える管理者数がBigcommerceの方が多かったり、用意しているデザインのテンプレート数がBigcommerceが多かったりもするが、ほぼ横並びになっている。

(テンプレート数について、Bigcommerceは、似たテンプレートを複数にカウントしているという意見も見られた。)

そして、ここで利用者側の目線に立って、話を最初に戻してみたい。

最初に「Shopifyの方が店舗の売上成長の恩恵を受けやすい収益構造になっている」と述べたが、裏を返せば、店舗が多くコストを払っているという事であり、店舗側に負担がかかっている事になる。

このあたりについて、少し深堀りしてみようと思う。

Shopifyの収益構造

ShopifyとBigcommerceのサービスに細かい違いはあるが、大きく違う点は、ペイメントプロバイダーを使用した場合の追加コストである。

Shopifyでは、「Shopify Payments」を使用せず、第3者のペイメントプロバイダーを使用した場合、プランによって「0.5~2.0%」の追加コストがかかる。一方でBigcommerceの場合は、この追加コストが掛からない。ココが大きな違いになっているのだ。

実際の記載部分は下記の通り。


出展:Shopifyホームページ

3段目に追加の手数料について記載されている。


出展:Bigcommerceホームページ

Bigcommerceのホームページでは、第3者のペイメントプロバイダーを使っても費用が掛からない旨を、Shopifyを名指しで比較して優位性を述べている。この辺りがアメリカらしい。

この情報を元にして、付帯サービスの売上、つまりは店舗側の負担について考察してみよう。

Shopifyの決算では、GMVとGPVが公開されている。また「Merchant solutions」(付帯サービス)の売上も公開されている。

GMV:全体の取扱高の事
GPV:「Shopify Payments」の取扱高の事

これらから、GMV(上図A)からGPV(上図B)を引き算すると、第3者のペイメントの取扱高(上図C)が算出できる

そして、この割合に占める「Merchant solutions」の売上を算出すると、大体2%から3%ぐらいの間に収まるっている事が分かる。(上図赤字)

Shopifyのホームページで確認したように、第3者のペイメントを使用時の追加コストが「0.5~2.0%」であることを考えると、「Merchant solutions」の大部分が追加コストからの収益であることが伺える。

つまり、Shopifyの「Merchant solutions」(付帯サービス)の売上の大部分は、第3者のペイメントを使用時の追加コストから創出されているのだ。

利用者の立場に立つと、追加コストがかかるなら、Bigcommerceで店舗を作った方がお得では?と思うかもしれないが、ちょっと待って欲しい。

例えば、連携できるアプリについて見てみよう。

対応アプリ


出展:Shopifyホームページ


出展:Bigcommerceホームページ

それぞれに対応しているアプリは、
Bigcommerce 823個 に対してShopify 4,743個 である。

サービスの充実度を考えると、現状では圧倒的にShopifyが優勢だし、11.74倍の「研究開発費」の大きさの面から、今後の機能拡充にも期待ができる。

個人的には、追加の数パーセントのコストを惜しむよりは、Shopifyを選択したほうが良いように思われる。

Shopify と Bigcommerce の方針の違い

では、投資対象としてBigcommerceはダメなのかと言うと、そんなことはなくて、違う方針で企業を成長させようとしている。

それぞれのEarning Callを確認すると、語る視点に違いがあるように思われる。

Bigcommerceはマクロ的な視点で経営戦略を語る場面が多く、Shopifyの場合はミクロの視点で、店舗が困っている問題を技術的に解決するために、この様な機能をリリースしたという現場視点で語る場面が多いように感じた。

この違いが、なにに起因するのか、CEOの経歴を調べると、腑に落ちる事がある。

Shopifyの創業者CEOの「Tobias Lütke」は、「Ruby on Railsフレームワーク」のコアチームの一員で、「Ruby on Rails」を使用して、サイト用の新しいeコマースプラットフォームを構築したようなプログラマー出身のCEOなのだ。そのような経歴から、現場の視点で技術的にどのように解決するか?というような視点が多くなっているように思われる。

一方でBigcommerce CEOの「Brent Bellm」はeBayやPaypalで経営幹部としての経験があり、PayPal EuropeのCEOも務めていたらしい。(Paymentで追加コストがかからないのはこの辺りが多少関係しているのかも知れない。)創業者ではないし、プログラマーでもないので、経営者としてマクロの観点から語る事が多くなるのだろう。

そして、SMBのマーケットが規模が大きく魅力的なマーケットだとと言っても、Bigcommerce はShopify と同等に戦える「営業及びマーケティング費用」や、「研究開発費」をひねり出すことはできないので、Bigcommerce としては「追加コストがかからないPayment」の優位性を売りにして、「Royal Dutch Shell、Diageo、Sharp Electronics、世界最大の消費者向けパッケージ商品会社2社、Forbes Global 2000の9つの企業」といった大企業の顧客をピンポイントで増やし、ブランド力と資金力をつけているところの様に見える。

サービス内容が同等だとしても、資金力に差がある場合、弱者が取るべき戦略としては、広告費では勝負にならないので、保有するコネクションを最大限に生かしながら、大きな取引先を少ない営業力で獲得するのが、妥当な戦略となるのであろう。

まとめ

Shopifyの急激な売上成長は、サブスクリプションの売上急増によってもたらされたものではなく、COVID-19の影響で、店舗のGMVの急増の恩恵を受けたものであり、これは店舗の売上成長の恩恵を受けやすい収益構造になっているShopifyの特徴が如実に表れたものである。

追加費用を嫌がる店舗もあるかも知れないが、大きな研究開発費を投じているし、機能拡充にも期待できる。また、店舗の売上成長がShopifyの売上成長に結び付き易いため、Shopifyとしても店舗の販売拡大を支援するインセンティブが働きやすく、良い収益構造になっているようにも思われる。マスク需要でもホームセンター需要でもShopifyを利用している店舗がある限り様々な形で恩恵を受けやすいという立場は面白くもある。

注意点としては、COVID-19の第2派が起こらない限りは、GMVの急増は期待できず、今期と同等の成長率を継続するのは困難な可能性が高いように思われる。

一方で、COVID-19の支援策として、90日のフリートライアル期間を経たユーザが定着すれば、サブスクリプションの売上は緩やかに底上げされるだろう。(これはBigcommerceも同じ)

そして、Shopifyは大きな「営業及びマーケティング費用」や「研究開発費」を使って、第一線級のプログラマーでもあるCEOの技術的知見を強みに、現場視点で問題に対して迅速に機能拡充させながら、2位以下を引き離し、売上を伸ばして行くと思われる。

一方でBigcommerceはCEOのPaypalやE-bayでの知見・人脈を活かしながら、第3者ペイメントに追加コストがかからない強みを生かして、短期的には大規模の店舗との契約を伸ばして売上を成長させていくと考えられる。そして、中長期的にはブランド力・資金力を付け、中小規模の店舗の売上を伸ばして、安定したサブスクリプションの売上を成長させて行く戦略であろう。

最後に

Shopifyに寄せられたサポートの電話を紹介したい。

I have a shopify account I’ve been working on to launch an online store for selling local vegetables and flowers. We’re just barely able to do this in the midst of trying to grow all this stuff. However, there is interest now in coming to pick up the vegetables on the farm, of which we hope to do pre-sales online.

I could cry right now because if it weren’t for Shopify, I don’t think we’d have a farm. So, I don’t think we’d sell anything. I almost didn’t set it up because… building a website is so hard…

Shopify made it so easy… They should know they’re really helping people… It’s really, important.

【意訳】

私はショッピファイのアカウントを持っていて野菜や花をオンラインで売ろうとしているの…

私は今にも泣きそうだわ。ショッピファイがなかったら、(COVID-19の影響で)私は農場を続けることができなかった。ウェブサイトを作るのはとても難しくて、もう少しで設定できず、何も売る事ができなかったもの。

ショッピファイがそれを簡単にしてくれたの。彼らに、彼らは本当に人助けをしてくれているという事を伝えたかった。それはとても重要な事だった。

Shopify Reunite – May 20th, 2020

出展:Shopify公式 (Re) unite サポートヘの電話

COVID-19の影響でオフラインでは販路を失った人々が簡単にe-commerceサイトを作れるサービスを使うことで、オンライン上で販路を確保できたのだ。

テクノロジーは使える人と使えない人の格差を広げてしまうといった見方もあるけれど、人々がテクノロジーを簡単に使えるようなサービスを提供することで、人々に平等な機会を与えているのだ。

投資では、企業に惚れるなとよく言われるけれど、人の役に立つ企業、人々に寄り添い生活を支える企業。その様な企業に投資したいと思う。

とは言え、株価はかなり高くなっているので、投資する方は、お気を付けください。

おまけ CDNについて

ShopifyはCDNにFastlyとCloudflareを使っている様子。

CDNとはコンテンツデリバリーネットワークの略でコンテンツを早く表示するために近くのサーバから応答を返すサービス。

Fastlyはキャッシュする時間を短くするのに強みがあるようで、更新頻度が高いものに強みがある。即時に更新・修正が必要で間違った情報が拡散すると困るようなニュース等と相性がよかったりする。Shopifyだと、商品画像の入れ替えの情報がすぐに反映される感じかな。

BigcommerceはAkamaiを使っている様子。まぁ、CDNの老舗なので信頼度は高いと思われる。

おまけ E-commerceとSNSサービス連携について


出展:Google Trends

ShopifyでもSNSと連携して商品を購入できるサービスがあったりするけれど、Instagramは右肩上がりで伸びているので、商売をする人はぜひ使った方が良いだろう。


出展:Google Trends

Pinterestでも最近動画の広告をよく見かける。Pinterestは最近注目されているので、商売をしている人は要注目です。

WlamartとMicrosoftがTiktokの買収に名乗りをを上げているけれど、いずれはTiktokとShopifyが連携するようになるかもしれない。

WalmartはShopifyと提携していたりするので、仮にTiktokの買収が決まったら、ShopifyとTiktokの連携機能は早い段階で実装されるかもしれないね。

おまけ コロナ後のGMVの推移について

日本では同様のサービスとしてBASEがあるんだけど、これは使用料は無料で、GMVに連動して費用が掛かるサービス。ShopifyともBigcommerceとも料金体系は違うけれど、BASEのGMVの見通しはShopifyのMerchant Solutionの今後の推移をイメージするうえで参考になるかも知れない。

出展:BASE決算資料より

簡単にネットショップを作るサービス。
「Bese」 とか 「Stores」 とか 日本のサービスなのに
なんで横文字を使いたがるのかなぁ。
ターゲットってITに弱い層じゃないの?

英語圏ですら、「Shopify」とか「Bigcommerce」っていうこんな分かり易い名前なのに… 「お店作ろう.com(どっと混む)」 とかいい気がするんだけど。

おまけ プラットフォーム事業者の運転資金の融資について

ShopifyはEarning Callで、下記の様に述べている。

第2四半期には、食品、飲料、タバコの割合が増加しましたが、四半期を通じて主力製品、アパレル、アクセサリー、化粧品も回復しました。

何でもないような、発言にも聞こえるけれど、これは、VisaやMasterCardやクレジットカードの発行者である銀行などがCOVID19の発生後の決済トランザクションの推移を公開していたのと同様に、Shopifyも店舗の売上を通じて、似たような情報を把握しているのだ。

売上の推移だけでなく、店舗の在庫情報も把握しているという意味ではVisaやMasterCardよりも多くの判断材料を持っているとも言える。

最近、E-commerceや決済のプラットフォームを提供する各社が運転資金の融資するサービスを開始している。

銀行が店舗に対して運転資金の融資をする際に、年度や4半期の決算を判断材料に融資をしたりするけれど、それよりもリアルタイムに毎日の売上と在庫の推移や、同業他社のトレンドを把握しているという意味ではShopifyの方が良質な判断材料を元に迅速に融資の判断ができる状況にあるとも言える。

信用スコアリングというような大層な名前は使わないかもしれないけれど、Shopifyの中に運転資金の融資をする判断基準のようなものは育成されているだろう。銀行の立場は、ますます、弱くなっていくのかもしれない。

おまけ カーブサイドピックアップ

COVID19の期間は店舗でのピックアップ機能が多く使われたらしい。

オンライン経由で注文して、店舗内や店舗外等で商品を受け取るサービスなんだけど、こういう機能をちゃんと実装して、商機を逃していないのが凄い。

そして、Shopifyは、すぐにカーブサイドピックアップ機能とローカル配送機能を強化して、販売者が店舗をより細かく制御できるように対応しているらしい。

因みに、カーブサイドピックアップとは、「カーブサイド:道路の縁石」「ピックアップ:車などで拾い上げる」という意味で、

オンラインで注文したものを車から降りずに店舗前の路上(駐車場)で、受け取るサービスの事なんだけど、COVID19の影響で利用に拍車がかかっている。大手の小売りは、だいたい対応してたりする。

ただし、「カーブサイドピックアップ」という言葉になじみがない人が聞くと、

「車で行って、カーブサイドでピックアップ?」

ピックアップという言葉には「行きずりの女性」みたいな意味もあるらしいので、

「車から路上を歩く女性をナンパしてお持ち帰り?」みたいな誤解を生んだりするらしい。

以上、役に立つ豆知識でした。(たたない)

 

面白かったら、「いいね」や「リツイート」や「コメント」してくれると嬉しいです。やる気が出ます。

では!

 

【参考】Shopifyの分析記事

【さらっと 銘柄紹介 】Shopify ショッピファイ(SHOP)
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