株式投資・雑記

【財務確認 ポイント】売り切りからサブスクリプションへ

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【財務確認 ポイント】売り切りからサブスクリプションへ

売り切り型のビジネスの場合、毎月・毎年、新たに物を売らないと売上が立たないが、サブスクリプション型へ移行すると、お客がサービスを使い続ける限り、売上が自動的に立つため、経営が安定する。

代表的な成功事例では、高価だったソフトウェア(約25万円)を月額払い(約5千円)にして、一度に支払う料金を下げ、敷居を下げてユーザの拡大を計ったAdobeが有名だ。

安定した収益が見込まれると、予算も立てやすくなるし、営業に注力するよりも、離反率を下げるためにサービスの質を向上させるというような、本質的な価値の向上に注力でき、良い循環に入るように思われる。

そんなサブスクリプションサービスの財務について、簡単にポイントを説明してみたい。

SaaSの企業の売上の積み上げイメージ

新規契約率や解約率によって、傾きは変わってくるが、一般的なサブスクリプションサービスの売上の積み上げのイメージは、上記の様になる。

層状になっているものは、継続している過去の契約を表している。層が右側に行くに従って幅が狭くなるのは、解約されたことを示している。この図を見ると、SaaSのビジネスモデルの場合、いかに解約率を下げて、契約を継続させ、過去の売上の上に新規の売上を積み上げていくかが重要であるかが分かると思う。

これがサブスクリプションサービスではサービスの質の向上・離反率の低下が重要になる理由だ。

つまり、サブスクリプション型のビジネスでは、売り切りのビジネスと比較すると、サービスの質、アウターケア等というような、売る時よりも売った後の重要度が上がるのだ。営業力も重要ではあるが、ビジネスの力点が後方にズレるように思われる。

売り切り型のビジネスから、サブスクリプション型のビジネスへ移行するという事は、売り方が変わるだけでなく、重要になるポイントが変わり、人員配置を含めたリソース配分が変わり、戦略が変わるのだ。

喩えるならば、営業力が重要視される「不動産販売」のビジネスから、住人の満足度を高める「不動産管理会社」のビジネスに変わっているのだ。

これが分かっていないと、カスタマーサポートの様な細かなケアが必要な営業の場面に、足し算しかできないツーブロックゴリラを配置する様なことになってしまう。これでは、ツーブロックゴリラが穴の開いたバケツに、一生懸命、水を注いでいるようなものだ。

サブスクリプションを提供する企業の売上遷移

最初からサブスクリプションサービスを提供している会社の売上を、更に簡略化すると上記の様なイメージとなる。

そして、「売り切り」から「サブスクリプション」へ移行した場合、簡略化すると下記のようなイメージになる。

売り切りからサブスクリプションへ切り替えた場合の売上遷移

売り切りからサブスクリプションへ切り替えた場合。例えば、売り切り20万円の物を、月額5千円(年間6万円)のサブスクリプションに切り替えると、切り替え直後は、同じ契約数を取っても、一度に上がる売上は20万円から6万円に減少する。

そのため、切り替えが一巡するまでは売上が停滞し、厳しい状態が数年間に渡って続くことになる。そして、一巡が終わった後から、売上が伸びるような動きをする。

上記の簡略化したイメージを具体的な企業で見てみよう。
まずは、映像が画像編集ソフトを提供するAdobeの売上を見てみよう

Adobeの場合

Adobeの場合、2012年から2015年までの3年間売上が減少、もしくは横這いで停滞し、サブスクリプションの売上が過半数を超えた(67%)ぐらいから成長が加速している。

次に3D CADを提供するAutodeskを見てみよう。

Autodeskの場合

Autodeskの場合も、Adobeと同じように、2016年から2019年までの3年間売上が減少、もしくは横這いで停滞し、サブスクリプションの売上が過半数を超えた(70%)ぐらいから成長が加速している。

次に確定申告・会計ソフトを提供するIntuitを見てみよう。

Intuitの場合もAdobeと同じように、2012年から2015年までの3年間売上が減少、もしくは横這いで停滞し、サブスクリプションの売上が過半数を超えた(72%)ぐらいから成長が加速している。

まとめ

「売り切り型ビジネス」から「サブスクリプション型ビジネス」への移行に成功した3社の傾向を見ると、移行する場合は、少なくとも3年ぐらいは売上の停滞に耐え忍ぶ必要があるように見える。

また、当然とも言えるが、サブスクリプションサービスの占める割合が半分を超えたあたりから、売上が増加傾向に転じ、70%を超えたあたりから明確な上昇トレンドに入っているように見える。つまり、サブスクリプションの売上が半分を超えるまでは厳しい状況が続くという事だ。

ここで、少し視点を変えて、逆の見方をすると、サブスクリプションの売上が増加している事によって、割合が半分以上になり、影響が大きくなり、全体の売上が増加した。というように、サブスクリプションのビジネスが成功したから結果的にそうなったと解釈する事もできるので、少し注意が必要かも知れない。

応用としては、OracleやCiscoやVmwareのような、サブスクリプションサービスの割合を増やしている企業を見る場合、この様な視点で見てみると良いのかも知れない。

注意点としては、AdobeやIntuitやAutodeskといったソフトは、サブスクリプション型にする事で、一度に払う金額が下げ、敷居が下がる事でユーザを拡大したが、同じように値段が下がればユーザが拡大する可能性があるのか?というような視点で、サブスクリプション型ビジネスの成長率を見る必要があるだろう。

もしサブスクリプションの売上の成長率が高くなっていれば、売上に占める割合が増えるにつれて、全体の成長率が向上してくるだろう。

以上、「売り切り型ビジネス」から「サブスクリプション型ビジネス」への移行についてでした。

おまけ

今回の資料を作るに際し、サブスクリプションの売上だけに特化した成長率を調べたので、下記に記載しておきます。

Adobeのサブスクリプションの売上増加率

2015年 55%増
2016年 42%増
2017年 34%増
2018年 29%増
2019年 26%増

Intuitのサブスクリプションの売上増加率

2016年 12%増
2017年 9%増
2018年 19%増
2019年 17%増

Autodeskのサブスクリプションの売上増加率

2017年 102%増
2018年 102%増
2019年 53%増

何かの参考になれば幸いです。では。

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