前回の記事を検証すべく、
S&P500とNasdaq100の中から、株価へ影響度が高い項目のベスト50社を抽出し、S&P500の株価と比較してみた。
検証条件
1.Morningstarより524社の10年分の財務データをダウンロード(参考:手順)。
(S&P500とNasdaq100を対象として、重複を除くと約524社)
2.機械学習で株価へ影響度が高いとされた上位5項目(※)のベスト50社を抽出。ただし、10年分の財務データを対象とし、上場間もない企業は対象外。
(※:EPS、BPS、固定資産回転率、売上債権回転率、設備投資)
3.ベスト50社の株価中央値を取得。(ベスト50社の株価を取得。10年前の日付を「1」として株価の変動を数値化。50社の中央値を算出。)
4.「各項目のベスト50社の株価中央値」と「S&P500」の株価をチャートにして比較。(縦軸は比較しやすくするため、最大値の7倍で固定。)
結果
「各項目のベスト50社の株価中央値」と「S&P500株価」の比較結果は下記の通り。
赤色がベスト50社の中央値、灰色がS&P500を示す。
図中の「%」は株価への影響度(前回の記事より)を示す。
これを見ると、確かにEPSとBPSが高い株の株価は高そうである。
ここで気になるのは、設備投資に積極的な企業の株価パフォーマンスの高さである。影響度が3.8%と低い割には株価が高くなっている。これは、収益(EPS)を上げないと、設備投資できないと考えれば、EPSに含まれるので、影響度は低くなっているかもしれない。
また、前回の記事で「固定資産回転率、売上債権回転率には売上が包含される。」「EPS、BPSには株数(自社株買い)が包含される。」そのため「売上」と「株数」も重要だろうという旨を記載したので、これらの項目も同様に調べる事にした。
結果は下記の通り。
売上が成長している企業の株価は高くなっている。売上が増えれば、間接的にEPSや固定資産回転率、売上債権回転率が増えることが多いため、売上は、これらにある程度は包含されていると見て良いと思われる。
一方で、自社株買い率が高い企業の株価はS&P500よりも少し高い程度であることが分かった。今回の調査結果を見ると、EPSと比較すると自社株買いの効果は、薄そうに見える。
これは少し考えると、当然のように思われる。というのも、1年間で売上、利益を30%成長させる企業が多くある中で、いくら自社株買いに積極的な企業でも、10年間で削減される株数は30%~55%程度である。好調な企業の1年間の売上・利益成長に及ばないのだ。
この結果を見ると、「売上」の成長を見ることにある程度は意味があるとしても、「株数」を見る事に、それほど意味はなく、単純にEPS、BPSの成長を確認していれば、良さそうに見える。
整理すると、前回の機械学習の結果では「EPS、BPS、固定資産回転率、売上債権回転率、設備投資」の順に重要性が高いという結果であり、今回の結果では、それらに包含されるとしても、単体の指標として「売上」も重要に見える結果となった。
個人的には、設備投資やBPSが伸びている企業の株価のパフォーマンスが、これほど良い結果になるとは、想定しておらず、意外性があり、興味深い結果であった。
前回の記事の補足として、参考になれば幸いです。では!
ちなみに、「EPS、BPS、固定資産回転率、売上債権回転率、設備投資」の確認ツールは下記の記事が参考になるかと思います。
財務諸表 確認ツール






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