財務分析 ★殿堂入り

【第1回】キャッシュコンバージョンサイクルを使って企業分析してみよう。

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財務分析
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キャッシュコンバージョンサイクルを使って企業分析してみよう。

キャッシュコンバージョンサイクルとは

キャッシュコンバージョンサイクル(CCC:cash conversion cycle)とは、
簡単に言うと

仕入のキャッシュアウトから売上のキャッシュインまでの日数。

この日数を短くすると資金効率が良くなり、好業績へつながる。
業績が良い企業は、CCCが短いことが多い。
CCCの意味、CCCを改善する方法、良い企業の見分け方について解説してみようと思う。

商売とはCCCの観点からみると・・・

一般的に商売は、
物を仕入れて、搬送して、店舗に陳列して、販売して、現金化し、次の仕入れに繋げる
図で表すと以下の通り。

CCCを図で表すと

「物の流れ」でみると(緑)
「仕入」が「在庫(棚卸資産)」となり、「販売」され「売上」になる。

「お金の流れ」でみると(
「仕入」は「買掛金」になり、月末等に支払う。
「売上」は「売掛金」になり、月末等に支払われる。

ポイントは法人・企業の支払いは、掛け金(約束)として処理されるため、実際の金銭の授受とタイムラグが生じる点。

そして、ここで重要なのは、

支払い(キャッシュアウト)から入金(キャッシュイン)までのタイムラグの期間(CCCの期間)は、運転資金は自己資金で補填する必要があるという点。

売れる事が判っていても、お金がなければ、次の仕入れに回すお金が無いため、自己資金で賄うか、社債等(有利子負債)で資金調達する必要が出てくる。

特に「事業拡大の局面」や「金利上昇の局面」ではCCCが短さが重要になる。
一方で資金繰りの観点から「景気後退の局面」でも重要になるだろう。

CCCをどうやって改善するか

では、どうやってCCCを短くするかというと、大きくは以下の3通り。

CCCを短縮する3つの方法

  • ①.買掛金の支払いを伸ばす。
  • ②.売掛金の回収を早める。
  • ③.棚卸資産・在庫の期間を短縮する。

(下図の番号と同じ)

(参考)CCCの算出を式に表すと以下の通り。

(図の下段)買入債務+CCC  =(上段)棚卸資産 + 売上債権
 CCC  = 棚卸資産 + 売上債権 ‐ 買入債務

もう少し詳しく、個々の改善方法について解説してみよう。

CCCを改善する詳細な方法

①.買掛金の支払いを伸ばす。

  • 安定・大量仕入を条件に、支払いを伸ばして貰う。
    (極端な延長は仕入れ先へ負担になるので悪手。)
  • 月末締め等の買掛金の支払いタイミングを意識して在庫を調整する。
    (例えば、期日前の仕入れを1日ずらすと支払いは30日後に変わる。)

②.売掛金の回収を早める。

  • 売掛金の起算日を正確に管理し遅らせない。
    (期日前の売掛金の起算日を1日ずらすと入金は30日後に変わる。)
  • 売掛金の入金遅延の督促。(営業さん、経理さんが頑張る)
  • 売掛金の回収日と買掛金の支払日のタイミングを調整。
  • 短期・即時の支払いを引き換え条件にディスカウント。
  • 会員になって貰い年会費を徴収。(実質、前払い)
  • ギフトカードを販売。(無利子の現金を確保)
    (年会費、ギフトカードはお客を囲い込みにも有効)
  • 顧客をBtoBからBtoCへシフト(Mix)する。
    (企業は月末払いだが、消費者は即時払い)
  • サービス利用料を年契約で先払いに方式にする。
  • 受注生産で受注時に前払いして貰う。
    (フェラーリはこれで資金繰りを良くしている)

③.棚卸資産・在庫の期間を短縮する。

  • 売れ筋商品の把握し、適切な在庫管理をする。
  • 天候・イベントを加味して精度の良い需要予測をする。
  • 顧客の購買パターンを分析して需要予測をする。
  • 売れ筋商品への集中と選択で商品ラインナップを絞り、在庫を減らす。
    (家電や家具等、暮らしに必要な商品ラインナップを増やして集客する良品計画の在庫回転率は悪化し続けている。)
  • 在庫セールで現金化する。
  • クーポンによる割引で在庫をコントロール。
  • 配送センターの自動化で輸送時間を短縮。
  • 消費場所の近隣に在庫を備えて配送時間を短縮。
    • 顧客先を倉庫に。→ 富山の薬売り、自動販売機
    • 店舗を倉庫に。→ コストコ
    • 店舗を倉庫&配送拠点に。→ アリババ(freshippo)
  • 在庫になりにくい商材を売る。
    (薬局は回転率の良い食料品を売ることで短縮(集客)する。)
  • 受注生産にする。
    (受注生産なら在庫ゼロになる。リードタイムを短縮するアリババのニュー・マニュクチャリングの犀牛智造(シーニュージーザオ)はこれに近い取り組みを行っている。フェラーリもこれに近い。)

以上のような方法がある。

大きく整理すると、

「①②買掛金・売掛金回転日数」は、金銭の支払いタイミングを変える小手先の改善で、「③棚卸資産回転日数」は、血のにじむのような努力による改善の積み上げのように思われる。

両方ともに重要ではあるけれど、

①②の改善は、優秀なCFOがいれば改善できる、やって当然の小手先の改善で、③の改善こそが、本当の企業の強さを表しているように思われる。

まぁ、そもそも①②の改善が出来ていない企業が多かったりするのだけど…

CCCを短かくすると何がよいのか?

CCCを短縮した場合の利点

  • 有利子負債で運転資金を調達する必要がない
  • 負債が減ると財務が改善し収益性が向上する。
  • 次の仕入・事業拡大の資金が入ってくるため、資金効率を高まる。
  • 在庫期間が減ると、機動的に判断・行動できる

AmazonのCCCの例

例えば、アマゾンのCCCはマイナス(-17.92日)になっている。

マイナスという事は、買掛金を払う前に売掛金が入ってくる状態で、お金が出ていく前にお金が入ってくる夢のような状態である。

どうやって実現しているかというと、下記の様な方法で実現している。

・Amazonプライムの有料会員(前払い)
・ギフトカード(前払い)
・AWS利用料(前払い)
・効率的な自社の配送センター(在庫期間短縮)
・Amazonマーケットプレイス(支払いタイムラグ)
細かくは他にもあると思うがざっくりというと上記のようなところだろう。

中でも、アマゾンのマーケットプレイス(出店者の商品をAmazon上で代理販売する仕組み)の売上は、お客が購入し、入金されてから出品者に支払われるまで、最大で2週間のタイムラグがあり、これが無利息の運転資金になる。これがCCCを短縮する一つの要因になっていると考えられている。

個人の即時決済」と「法人への買掛金の一括支払い」という、商習慣による決済のタイムラグを上手く利用したビジネスモデルにより資金効率を高めているのである。

他にも棚卸資産回転日数を短縮する方法として、アマゾンでカートに入れると、その時点で在庫が準備されるという噂がある。

次回は、具体的な企業のCCCを見ていきたいと思う。

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