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ROEを上げるには? デュポン分析(ROE分解)

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ROEを上げるには? デュポン分析(ROE分解)

1919年にデュポン社で発案されたデュポン分析、今でも形を変えて会社の業績や経営方針を説明する際に使われている。今回はデュポン分析を使いながら、下記のような事を説明したいと思う。

  • ROEを上げるにはどうすればよいのか?
  • 優秀な企業の見分け方
  • 利益率が高ければ良い訳ではない
  • ROE以上に重要な事
  • 業種別ROEの平均値

デュポン分析

上図はデュポン分析を調べていたら出てきた図。現代の表現の仕方とは違うけど、この図にほぼ全ての要素が詰まっている。1919年に、これが完成していたとは驚きである。

 

ROEを上げるには?デュポン分析(ROE分解)①

デュポン分析 デュポン分解

ROEは純利益÷自己資本で表されるが、

ROEは上図の様に、3つの要素に分解できる。

  • ①売上高純利益率 = 純利益率÷売上高
  • ②総資産回転率 = 売上高÷総資産
  • ③財務レバレッジ = 総資産÷自己資本

上図の黄色青色の斜線のように約分すれば、

ROE=純利益÷自己資本となる。

 

つまり、この①②③を上げればROEが上げられる事になる。

  • ①売上高純利益率 → 利益率を上げる
  • ②総資産回転率 → 効率を上げる
  • ③財務レバレッジ → 資金調達で事業を加速する

これを更に細分化してみよう。

次の図との関連性

上図は前後の図の関連性を示している。

ROEを上げるには?デュポン分析(ROE分解)②

上図はデュポン分析を細分化したものである。

会社の業績や経営方針を説明等で似た図を見た事がある人も多いのではないだろうか?(始点がROICになっていたり、細分化の項目に多少の違いはあるかと思うが。)

この図を使って、ROEを向上させるウォルマートエブリデーロープライス(EDLP:いつでも安売り)の戦略について説明したい。

EDLPでは、特売の広告を出す必要がなくなるので⑥販管費が安くなる。更に需要が安定するため、予測がしやすくなり、⑦棚卸資産回転率が向上し、同時に⑩CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)が向上する。また予想精度と需要が安定することで、⑥仕入・在庫・物流のコストが抑えられ、毎日の安売りによって顧客のロイヤリティが上がって④売上高成長率が向上するという戦略である。

これらにより、安売りで⑤原価率が悪化しても、全体としてROEを向上させることができる。

企業の戦略が、どこに効いているのかを見る時は、この図と照らし合わせると理解しやすい。また、これを逆手に取ると、これらの数値の改善を見る事で優秀な戦略を取っている企業を抽出することができる。

次に、利益率が高いことは良い事だけど、利益率だけが重要な要素ではない。という事を実際の企業を比較しながら見ていきたい。

各社のROEと3要素の比較

各社のROEとROEを構成する3要素を表したものである。

ウォルマートコストコ

利益率が低いが、資本回転率を高くする事でROEを上げている。

ティファニールイビトン

高級路線で利益率が高いが、資本回転率は低い。

ウォルマートは、最近苦戦をしているが、コストコを見て貰えれば、利益率だけがROEを上げるために重要な要素ではないと分かって貰えるだろう。

各社の株価の比較

図は、2007年のリーマンショック前からの10年間の株価を表したもの。

どの期間を見るかで変わってくるが、この図からも、利益率(売上高純利益率)だけが重要な要素ではないと分かって貰えるだろう。

(ちなみに、ティファニーが最近、上昇しているのはルイビトンがティファニーを買収するという報道が流れたため値上がりしている。)

ただし、ROE(およびROIC)が高い事は重要だが、株価が上がる要因として一番重要なのは成長率である。

各社の株価の動き

図のように、高いROE(ROIC)の企業達がS&P以下のパフォーマンスだったりもする。(抽出期間により誤差はあると思います。)

  • MMM:3M ROE 50.09 (ROIC 22.23)
  • CSCO:シスコシステムズ ROE 30.27 (ROIC 17.74)
  • JNJ:ジョンソンエンドジョンソン ROE 25.51(ROIC 16.9) 
  • KO:コカコーラ ROE 37.79 (ROIC 10.58)

ROEは上記の企業方が高いが10年の株価は下記の企業の方がパフォーマンスが良い。

  •  WMT:ウォルマート ROE 9.54 
  •  COST:コストコ ROE 25.32
  •  TIF:ティファニー ROE 18.51
  •  LVMHF:ルイビトン ROE 20.61

これがどういう事かと言うと、売上は伸びていないが、自社株買いにより、自己資本を小さくして、③財務レバレッジを改善することで、ROEが改善している企業があるのだ。

経営は順調か?資金が有効活用されているか?を判断する上で、ROE(自己資本利益率)を見る事は重要であるが、ROEの要素は、「①売上高純利益率、②総資産回転率、③財務レバレッジ」の3つに分解して、分析した方が良いだろう。特に、売上の成長(利益の拡大)には注意を払うのが良いと思われる。

上記の企業の売上の成長は下記の通り。

ROEが高い企業より、売上が成長している企業の方が、株価は高い。

株価があがるには、高いROEが必要だが、

それ以上に売上高の成長が重要であるように見える。

業種別のROEと3要素の平均値

最後に参考として業種別(米国株395社)の平均値を添付したい。
業種別の特性の違いで、利益率が高かったり、回転率が高かったりするのを、感覚的に把握するのに参考にして頂ければと思います。

【参考】

米国株 400社をデータ分析した結果をさらっと整理
米国株 400社をデータ分析した結果をさらっと整理400社全体の「決算時期、利益率、配当性向、配当利回り」を集計して分布を整理。業界別の「配当利回り、配当性向、原価率、利益率、ROE、ROA、 ROIC、CCC」の平均値を整理。分...

(おまけ)

ずっとルイビトンって書いてたけど、ルイ・ヴィトンが正しいのか・・・

やっちゃった感がある。

 

株価があがるには、高いROE(ROIC)が必要という点について、下記の記事が参考になります。

PBR-ROE モデルから PBR-ROIC モデルへ(400社の分析データより)
PBR-ROE モデルから PBR-ROIC モデルへ(400社の分析データより)伊藤レポートが2014年8月に発表され、6年が経過した。低金利が続く中で、経営の収益性の目標として、「ROE8%以上」を目標する企業は、時代から取り残されて...

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