なぜ、カナダ人は子犬びいきなのか!?
昔、カナダ人が子犬をひいきしている場面に出くわした事があり、なぜ、子犬をひいきするのか聞いてみた。という話。
NYから飛行機で1時間半。
カナダ、トロント・ピアソン国際空港に降り立った。
海外といえども、カナダは西海岸よりも断然近い。
ホテルにチェックインするため、市街地へ向かっていると、街が予想以上に大きく、近代的であることに面食らった。少し慌てて、スマホで調べてみると、トロントはカナダで一番人口の多い都市らしい。どおりで発展しているはずだ。何も調べず来たものだから、「トロント」という語感から、勝手に牧歌的な田舎町を想像していたのだ。(たぶん、とろろ昆布とか、目がトロンとろんとしているとか、トロールとかそんなところからのイメージ。)
移動中、街行く人々を見ていると胸に「赤い花」をつけている人が多いことに気付く。電車の中でもバスの中でも、赤い花を付けている人が目立つ。赤い花を付けていない人は、カナダ人じゃないと言わんばかりの勢いで、付けてないのは異国の旅行者だけじゃないかと錯覚するぐらい多くの人が赤い花を付けている。
「あれは何だろう?」と疑問に思いながら見ていた。
ホテルに到着し、カウンターでチェックインの手続きをしていると、カウンターの横に赤い花のバッチが置いてあり、その横に「子犬募金」と書いた「募金箱」がある。
どうやら、赤い羽根募金のように、募金をすると、赤い花のバッチが貰えるようだ。恐らく、募金は、捨てられた犬の保護とか、盲導犬への支援に使われるのだろう。
檻の片隅で、寂しそう佇むラブラドールの子犬が、つぶらな瞳で、こちらに何かを訴えかけてくる情景を思い浮かべながら「幸せになれよ!」という思いで子犬募金をすることにした。
そして、Doに入れば、Doに従えの精神(※)で、さっそく、貰った赤い花を胸につけ、地元の人達に溶け込むようにして街中に繰り出した。(※:「郷に入れば郷に従え」と「When in Rome do as the Romans do.」がごっちゃになっている。)
・・・
そして、3日後、なんだかんだで用事が終わり、帰りの飛行機で、隣になったカナダ人男性に、もやもやしていた疑問をぶつけてみた。
「なぜ、カナダ人は子犬募金をするのか?」
「なぜ犬ではなく、子猫でもなく、子犬をひいきするのか?」と手に取った赤い花のバッチを見せながら聞いてみた。
その質問に「きょとん」としていたカナダ人男性が、少し間をおいて教えてくれた。
これは「子犬募金」ではなく「ポピーの花募金」です。
ポピーの花は、第一次世界大戦で真っ赤に染まった丘を表していて、戦争の悲惨さを思い出し、悲劇を繰り返さない事、そして、国に奉仕した戦死者や退役軍人を支援する事を目的とする募金なのです。と説明してくれた。
完全に誤解していた。
「Puppy donation(子犬募金)」ではなく「Poppy donation(ポピーの花募金)」だったのだ!
子犬に募金をしたつもりが、退役軍人に募金をしていたのだ!
子犬募金を受け取った退役軍人は困惑するだろうし、そもそも、つぶらな瞳をしたラブラドールの子犬(空想)に、募金が届いていないのだ…
なんだか、戦死者にも子犬にも、非常に申し訳ない気持ちになった。
手に取った赤い花をじっと見つめる。あーこれ、ポピーの花なのね…
世の中、なかなか、うまくいかないものですね。
コメント