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資金繰りで重要!実例「キャッシュコンバージョンサイクル」改善方法

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資金繰りで重要!実例「キャッシュコンバージョンサイクル」改善方法

会社の経営ではキャッシュフローが重要になる。

手元にキャッシュがないと会社が黒字倒産という事もあり得る。

そんな資金繰りで重要となる一つの指標が、キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)である。

今回はキャッシュコンバージョンサイクルを改善する方法について下記の4つに観点で説明してみたい。

  • キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)とはなにか?
  • CCCを改善する一般的な方法
  • CCCを改善する方法:Amazonの場合
  • CCCを改善する方法:フェラーリの場合

キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)とは資金枯渇期間

キャッシュ・コンバージョン・サイクルとは、簡単に言うと、仕入れのキャッシュアウトから売上のキャッシュインまでの資金が枯渇する期間の事である。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を式で表すと下記の通り。
棚卸資産回転日数 売上債権回転日数 = 買入債務回転日数 +CCC
式を入れ替えると下記の通り
CCC 棚卸資産回転日数売上債権回転日数 買入債務回転日数

これを図で表すと上記の様になる。

「物の流れ」を緑、「お金の流れ」を黄色で記載しているが、ポイントは、仕入も売上も即時にお金の出入りが発生しない点である。

業態によって違いはあるが、通常、商売をする場合、月1回まとまった単位で仕入れの代金を支払いが発生し、月1回まとまった単位で売上が入金される。

そして、仕入れのキャッシュアウトから売上のキャッシュインまでキャッシュコンバージョンサイクルの期間は、現金が入ってこないので、資金が枯渇する可能性がある。

従って、この資金枯渇期間は、銀行から借金をしたり、自己資金で賄う必要がある。従って、この期間が短ければ短いほど資金効率が良い事になる。

では、どうやって資金繰りを良くするか?
キャッシュコンバージョンサイクルを短縮するか?

一般的な方法を挙げてみよう。

キャッシュ・コンバージョン・サイクルを改善する方法(一般的な改善方法)

上図のとおり、CCCを短くするためには、下記の3つの要素を調整する事になる。

  • 棚卸資産回転日数を短く
  • 売上債権回転日数を短く
  • 買入債務回転日数を長く

例えば、「買入債務回転日数を長く」するためには・・・

支払い期限の交渉:仕入れの支払い期限を安定した発注や大きなボリュームを発注する等、相手に有利な条件を付けて、長めに設定してもらうような交渉をする。例えば、棚卸資産回転日数が長い(在庫期間が長い)商材を扱う場合は、その期間と同程度に設定して貰えるように交渉すると、納得性もあるし、かなり資金繰りが楽になるだろう。(どうしても、資金繰りで困っている際は、ボリュームがある取引先から交渉すると効率的に進められる。ただし、他の取引先に信用不安を持たれない様に慎重に進める必要があるだろう。)

発注日の調整:仕入れの支払いに月1回の締め日を設けている場合、ちょっとした工夫だが、締め日の当日の発注を、1日遅らせるだけで、30日後の支払いとなるため、締め日を意識しながら発注管理をすると資金繰りが良くなったりもする。

例えば、「売上債権回転日数を短く」するためには・・・

債券回収の厳格化・期日管理の徹底:仕入れの逆の考え方で、売上の回収は短い程、資金繰りが良くなるため、売上が立った日を厳密に管理する事が重要になる。売上の計上を1日遅らせる事で入金が30日後になることもあるので、厳密に管理する事が重要になる。また、入金が遅れている企業があれば、厳格にフォローする事が重要であろう。

料金前払い・料金即日払いのサービス・商材を扱う:資金繰りを良くするための方法として、スマートな方法は、料金前払いや即日払いのサービス・商材を扱う事である。このような商材を扱う場合、売上債権回転日数を極端に短くすることが可能になる。

月払いのBtoBから現金払いのBtoCへシフト or Mix:資金繰りを良くするための方法として、客層を変えることも有効な手段になる。BtoBのビジネスでは、翌月払いが一般的だが、現金払いが原則の一般消費者をターゲットとしたBtoCのビジネスの場合、即日入金されるため、資金繰りが良くなる。資金繰りの改善の観点から、客層をBtoBからBtoCへシフトしたり、Mixしたりする事も有効だろう。

ギフトカード・年会費による前払い:ギフトカードや会員費などは、商品が売れる前に、現金が入ってくるため、前払いのような状態になる。資金繰り改善の観点から、このようなサービスを提供できないか検討するのも良いだろう。

例えば、「棚卸資産回転日数を短く」するためには・・・

適切な場所に適切な量の在庫:在庫が切れて商機を逃さない様に安全在庫を保ちながら、売れ残って無駄な在庫が増えない様に、売れている場所に必要なだけの在庫を用意する事が重要になる。つまり適切な場所に適切な量の在庫を保つことが重要になる。

精度の高い需要予測による発注・生産:無駄な在庫・売れ残りを発生させないために、天候やイベントや売れ行きのトレンドなどから精度の高い需要予測を実現し、発注や生産を行う事が重要になる。

地道なカイゼンによる生産・配送リードタイム短縮:商機を逃さないためには、リードタイムを短くする事が重要になる。秋物のファッションのトレンドが分かっても、消費者の元に商品が届くのが春になれば意味がない。消費者が待てない傾向は年々高まっており、欲しいタイミングで直ぐに届ける必要がある。

リードタイムが短縮されると需要予測の期間は短くてよくなるので、予測精度も向上する。さらに、安全在庫の個数を減らすことができるので、全体の在庫量も削減することができ、機動的に意思決定・方向転換ができるようになる。そのため、各社は血のにじむ様な地道なカイゼンを積みあげてリードタイムを短縮している。

受注生産:なぜ在庫になるのかを突き詰めて行くと、需要と供給がマッチしないからである。そのミスマッチを無くすためにはどうすれば良いのか?突き詰めて行くと、一つの究極形は完全受注生産になる。ITや生産技術を駆使しながら、受注生産(or それに近い形)を実現する事で資金繰りは改善する。

売れやすい商材を扱う・商品ラインナップの絞りこみ:在庫期間の観点だけで考えると、業種を選んだ時点で勝敗はついている。例えば、工業用の機械が牛乳より在庫期間が短くなるはずがない。つまり、売れやす商材を扱う事で、在庫回転日数を短縮することができる。たとえば、薬局で食料品を扱うことで、全体の在庫回転日数を短縮し、資金繰りを改善する事ができる。

また、商品のラインナップを絞り込むことで、在庫回転日数を短縮することができる。例えば、逆の例になるが、良品計画は、生活に必要なものが何でもそろう店づくりをして、集客しようとして、家電や家具などの商品ラインナップを増やした結果、10年間棚卸資産回転日数は悪化し続けている。商品ラインナップを絞り込んだり、売れやすい商材に集中したり、と選択と集中が必要なのかもしれない。

在庫セールで現金化・クーポンで需要と在庫をコントロール:売れない在庫が積みあがってくると、資金繰りが悪くなる。在庫として保管しておくにもコストがかかる。それならば、いっそのこと在庫セール等の割引で商品を現金化してしまう決断も必要だろう。また、需要の予測とズレがあったり、購買を喚起させたい場合にはクーポンを駆使して需要と在庫をコントロールすることも有効になるだろう。

一般的な改善方法を述べたところで、例えばAmazonの場合を見てみよう。

CCCを改善する方法:Amazonの場合

AmazonのCCCはマイナス(-17.92日)となっている。図の右下を見て貰えば分かる様に、仕入れの支出の前に売上が入金される状態になっている。

来月の取引先への支払いをどうしようとか、家賃の支払いをどうしようとか、従業員への給与の支払いをどうしようとかいう資金繰りの悩みとは無縁の資金繰りの良さである。それどころか、次の仕入れや、事業の拡大の資金としても使える資金繰りの良さである。

この資金繰りの良さをどうやって実現しているかというと、下記の様な点で実現している。

  • 配送センター・配送網の拡充(リードタイムの改善)
  • Amazonプライム(前払い)
  • Amazonギフトカード(前払い)
  • AWS利用料(前払い)
  • Amazonマーケットプレイス(支払いタイミング差異)

各種、前払いのサービスが目を引くが、中でもAmazonマーケットプレイスは商品が売れてから出品者へ支払われるまでに最大で2週間のタイムラグがあり、この販売から出品者へ入金までタイミングの差異が資金繰りの良さに貢献しているのではないかと考えられている。

BtoCからは即日現金払いでお金を回収し、BtoB相手へは纏めて入金するという商習慣の違いにより資金繰りの良さを実現しているのだ。

そんな中で、ブランド価値・競争力を全面に出して、資金繰りを良くしている企業もある。

次に、フェラーリの例を見てみよう。

CCCを改善する方法:フェラーリの場合

製造業では珍しく、フェラーリのキャッシュコンバージョンサイクルはマイナス(-34.57日)になっている。

なぜこんなに資金繰りが良いのかを知る為に、フェラーリを購入した車好きの人達が書いている記事をいくつか確認していて分かったのだが、フェラーリを買うには20%の頭金を支払う必要があり、納車までに2年ぐらいかかるという事が判明した。

例えば、約3000万のフェラーリを購入する場合、
注文時に価格の20%である600万を頭金で前払いして、
発注から2年後に納車されることになる。

フェラーリの立場から言えば、2年間無利子で資金を調達することができ、受注してから生産するので、在庫リスクが発生しない。

その企業にしか提供できない価値を提供するフェラーリのブランド力・技術力の強さが垣間見れる資金繰りの良さ・ビジネスの強さである。

ちなみに、参考にTESLAとTOYOTAのキャッシュコンバージョンサイクルも確認してみよう。

キャッシュコンバージョンサイクル:Teslaの場合

テスラのキャッシュコンバージョンサイクルは12.34日となっており、比較的短い部類だと思われる。棚卸資産回転日数は買入債務回転日数は少し長めといったところだろうか。

次にToyotaのキャッシュコンバージョンサイクルを見てみよう。

キャッシュコンバージョンサイクル:Toyotaの場合

トヨタのキャッシュコンバージョンサイクルは108.19日となっており、テスラの12.34日とは比較にならない程長い。これはどういう事かと言うと、カーローンを提供しているトヨタファイナンスが連結対象となる為、回収期間が長くなっているのだ。(これは、GMやFordも同様である。)

そして、棚卸資産回転日数と買入債務回転日数は、どちらも37日ぐらいとなっており、どちらも60日前後となっているTeslaと比べると短くなっている。

しかし、結局のところ、これは成長段階の状況が違うのでToyotaとTeslaを単純に比較できないという事を表している様に思われる。

Teslaは猛スピードで工場を建設しながら生産力を拡大している最中なので、棚卸資産回転日数は買入債務回転日数は長めになるし、カーローン等の分野に進出して、資金繰りの良さを犠牲にしても事業を拡大するような成熟段階ではないという事を示している様に思われる。

いずれ、事業が成熟した時には、Teslaも他の自動車メーカーと同じようにカーローンの分野にも進出する事も考えられるが、その場合は、ひとつの成長段階に区切りがついたという兆候なのかもしれない。

おまけ Teslaは高級車なのか?

今回、GM、Ford、Toyota、Ferrari、Teslaの指標を見比べていたのだけど、現状、Teslaの原価率80%ぐらいであり、他の自動車メーカーと同程度となっている事が分かった。

消費者目線でいうと、Teslaは高めの価格帯の車という印象だが、

原価率の観点でいうと、ブランド力・技術力で儲ける高級車というよりは、原価率が高いので価格が高くなっているという他の自動車メーカーと変わらないコストパフォーマンスで売っている車の様に思われる。

モデルによっての差や、技術革新による原価率の低減によって、利益率が向上するかもしれないし、今後の方針までは分からないけれど、ブランド価値を付加して価格を吊上げているというよりは、広く普及させるためにコストパフォーマンスを重視した価格帯を目指しているように思われる。実際は高いけど、この辺りは好感が持てる。(株価も高いけど…)

ちなみに、Teslaや大抵の自動車メーカーは、原価率80%で1桁の利益率(0~7%)で奮闘しているのだけど、Ferrariの原価率50%程度で利益率は20%程度である。目指す方向が違うので、単純に比較はできないけれど、フェラーリのブランド価値・競争力の強さには舌を巻く。(この観点では利益率だけに着目していて、成長の観点が入っていないので、その点にはご注意を。利益率が高いビジネスが、必ずしも成長するビジネスでは無いという意味です。)

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