株式投資・雑記

【原油先物】WTIとBrentの価格乖離について

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原油先物 WTIとBrentの価格乖離について

2020年4月20日、WTI原油先物の価格が一時1バレル-40.32ドルに達し、最終的には-37.63ドルを付けた。同じく原油先物であるBrent原油先物の価格は比較的安定しているのに比べて、なぜ、マイナス価格(原油を買って貰うのではなく、お金を払って原油を引き取って貰う状態。)となってしまったのか、その原因について、解説してみたい。

原油先物WTIとBrentの価格の乖離

原油先物はWTIとBrentが有名である。

WTIはウエスト・テキサス・インターミディエートを意味するアメリカの原油先物で、Brentは北西ヨーロッパの北海ブレントを中心とした原油先物である。

この2つには流動性に起因する値動きの違いがある。
チャートで値動きを見て見よう。

原油・原油先物の価格推移(2003年以降)

出典:TradingView
赤:WTIの原油価格、青:Brentの原油価格

2006年以降、「シェール層から石油を取り出す技術の進歩と、採算ラインを上回る原油高」により、アメリカでシェールガス革命が起き、「供給が増えた事と、WTIの流動性の悪さ(※)」から、定常的にWTIの価格は、Brentの価格を下回っている。2011年あたりからの乖離が顕著になっている。
※流動性の悪さについては、後述。

原油・原油先物の価格推移(2020年4月頃)

出典:TradingView
赤:WTIの原油価格、青:Brentの原油価格
オレンジ:WTI先物の直近の契約、黄色:WTI先物の次の契約

4月20日、WTI原油先物の価格が一時1バレル-40.32ドルに達し、最終的には-37.63ドルを付けた。

先物は受け渡し日の前月25日から3営業日前、22日が最終取引日。
25日が非営業日の場合、前営業日から3営業日前が最終取引日。
2020年4月のWTI先物5月限の場合、4月25日が土曜日のため、4月21日(火)が最終取引日であった。

つまり、最終取引日の前日に最安値を付けた事になる。

このグラフから分かるように、WTIの原油価格はBrentに対して、定常的に安い状態にあり、瞬間的には、異常な安値を付けている。

これはWTIが最終取引日時点で、買いのポジションを持っていた場合、「現受け」をしなければならないが、現物受け渡しの場所が、WTIがオクラホマ州クッシングで受け渡しになるという場所の悪さによる流動性の低さに起因している。
米国内にパイプラインが張り巡らされてはいるが、海に面するBrentにくらべ、流動性は低い。そして、直近のサウジ・ロシアの原油増産、コロナによる需要の落ち込みでクッシングの貯蔵タンクの在庫が増加し、在庫を抱えるスペースがない状態であった。貯蔵タンクのスペースが無い状態で原油の現物を渡されても処理に困る為、投機筋を主導に売りが売りを呼び、-40.32ドルまで下落することになった。

一方で、Brentは、現物受け渡しでなく、現金での決済が可能なため、WTIと比較して価格が安定している。

投機目的ではなく、商売の実需として原油取引きに、単純にリスクヘッジをかけたいのであればBrentでヘッジをかけるべきと思われる。逆に、流動性の悪さによる過剰な値動きを期待するのであれば、WTIで売買するのも良いのかもしれない。

オクラホマ州、クッシングの場所

出典:Googlemaps
オクラホマ州、クッシングはアメリカ大陸の内陸部に位置する。米国内にはパイプラインが張り巡らされてはいるが、海に面するBrentにくらべ、流動性は低い。

WTI -40.32ドルは異常? 乖離はいくらが妥当なのか?

WTI原油先物価格 -40.32ドルは異常である。同時期のBrentが20ドル近辺で推移していた事を考えると60ドル近くの乖離が発生している。

WTIはアメリカ内陸部のオクラホマ州クッシングでの現受けになるため、流動性が悪い。と言っても、これは異常値である。

アメリカ内陸部から原油を海岸沿いのヒューストンまで輸送した場合のコストを見て見よう。

原油の輸送コストについて調べて見ると下記の通り

アメリカ中南部のパーミアンの原油

    • ヒューストンにパイプラインで送る場合、約2ドル/1バレル(以下略)。
    • ヒューストンに鉄道輸送する場合、9ドル。
    • ヒューストンにトラック輸送する場合、15ドル
      ※パイプラインには、全ての量を輸送する容量がない。

アメリカ中北部のバッケン原油

    • クッシングへ輸送する場合、コストは6.50ドル~7.00ドル。
    • ヒューストンへ鉄道輸送する場合、コストは12ドル

これらから、海岸沿いのヒューストンへ輸送は、12ドル~15ドル程度であることが分かる。追加で輸送コストがかかったとしても、20ドル程度のコストを支払えば、海岸まで輸送でき、タンカーに積込めるので、Brentより、60ドル以上も乖離が発生するのは過剰な値動きといえるだろう。

(-40.32ドルで原油を買った人が、輸送費20ドルで海岸沿いまで輸送し、Brent価格の20ドル付近で売却できた場合、1バレルあたり、40ドルぐらいの利益を出せた可能性がある。)

つまり、輸送コストが12ドル~15ドル程度だとすれば、Brentとの乖離は15ドル程度ぐらいの乖離が妥当であろう。それ以上の乖離が発生した場合は、チャンスなのかもしれない。

1バレルは159リットルなので、素人が扱えるような量ではないが…

 

以上、WTIとBrentの価格の乖離、値動きについて整理してみました。

 

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