株式投資・雑記

インフレが進む世界で生き残るのだ!

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インフレが進む世界で生き残るのだ!

原油、原材料の価格が高騰しインフレが進んでいる

材料費、輸送費が増加し、ガソリン価格だけでなく、生活必需品にも、じわじわと値上げの波が押し寄せてきている。米国では、人件費も高騰しているようだ。

これから「ハイパーインフレになる!」とは言わないけれど、貨幣価値が減価する社会において、どのように振舞えば良いか、歴史を振り返り、考える事には意味があるだろう。と思い、紙幣の価値が1兆分の1になったと言われる1920年代ドイツのハイパーインフレに関する書籍を読んでみた。

「ハイパーインフレの悪夢」(原題:When Money Dies)

ハイパーインフレの悪夢: ドイツ「国家破綻の歴史」は警告する
ハイパーインフレの悪夢: ドイツ「国家破綻の歴史」は警告する

上記の書籍はドイツのハイパーインフレを振り返る本である。

バフェットが「必読書」に推薦したという噂で、一時、古本市場で21万円まで高騰したこともあるらしい。(後に、バフェットは否定している。)書籍の価格自体がハイパーインフレを引き起こした格好だ。

この本の著者のスタンスは、ドイツのハイパーインフレについて「貨幣の供給量が多すぎた事が原因だ」とか、「戦争が原因だ」とか、原因を単純化せずに、経済、政治を複合的に捉えることを目的とし、その時に起きた事件、価格の変化等をトレースしながら、要人や民衆のコメントを紹介し、その時代に立ち込める空気感を描いている。

そのため、整理された情報として振り返るのには適さないが、ハイパーインフレが進む壮絶な状況をリアルに感じることができる内容になっている。

そんな本書の中からいくつかの印象的な言葉を紹介したい。

パワーワード

この書籍には、学びのあるパワーワード(印象深い言葉)が記載されている。その中から、個人的に印象深かった言葉をいくつか紹介したい。

貨幣価値の下落について

レストランでは、勘定書にある食事の値段が、注文したときより高くなっていたりした。1杯5000マルクのコーヒーが、飲み終わったときには8000マルクになっているのだ。

出典:アダム・ファーガソン(2011), ハイパーインフレの悪夢, 新潮社, P179

有名な話なので、知っている人もいるかもしれないが、インフレの進行は早く、コーヒーを飲んでいる間に値段が1.6倍に跳ね上がっている状態だったらしい。

このような状態では、現金を早く消費するインセンティブが働く。更に消費を早めるどころか、受け取りから早めるように、給与は月払いではなく、週払いの要望が強かったらしい。

労働者は賃上げを要求するが、賃上げが物価の上昇スピードに追随できない状態にあり、末期には賃上げ交渉をしている最中に、物価が上がるため、賃上げ交渉の水準を決めれなかったようである。

物価の安定がいかに重要な事か、また、急速に貨幣価値が下がる中では、いつでも稼げる力を保有しておく事の重要性を考えらさせられる出来事である。

インフレと頭脳労働者について

頭脳への需要はない。つまり、頭脳にはもはや市場価値がないということだ。これはドイツに必ず災いをもたらし、全世界とは言わないが、中央ヨーロッパの文明を没落させるだろう。

出典:アダム・ファーガソン(2011), ハイパーインフレの悪夢, 新潮社, P146

明日の食料確保が、目先の優先事項となる急激なインフレ進行下において、流通・販売など目に見えないサービスや情報の生産を行う第3次産業のホワイトカラーの仕事は価値を失い、農業など食べ物を生産する第1次産業の価値が高まった。

食料品の生産から程遠い、デスクワーク中心のホワイトカラーにはつらい時期だったようである。ホワイトカラーの人は防衛策を何か考えておくべきなのかもしれない。

そして、更に追い打ちをかける下記の記述がある。

しかしインフレは、その死の雨を差別的に降らせた。一部の人にとって貧困化の現実は、けっしてひそやかな出来事ではなかった。不労所得者層 ー貯蓄や年金や恩給に頼って生活している人たちー については、すでに述べたとおりだ。そのなかには、薄給の知的職業層 ー判事、陸軍将校、代議士などー も含まれていた。彼らの地位と威厳は、不労所得で補われていたからだ。

出典:アダム・ファーガソン(2011), ハイパーインフレの悪夢, 新潮社, P270

貯蓄や年金や恩給に頼っていた人が苦境に陥ったというのは容易に想像がつくが、それだけでなく、苦境に陥った人として知的職業層を挙げ、地位と威厳は不労所得で補われていたと言い切る記述、なかなかなパワーワードである。

不労所得者というと、会社を辞めた人をイメージするが、会社に勤めていても、社会に価値を提供できていない人をバッサリ不労所得者と言い表している。今でいえば、過去の実績で地位や役職を得ている人たちのことを指す感じだろうか。

これも、物価安定の重要性と、現時点での稼ぐ力の重要性を考えらさせられる記述である。

社会秩序の崩壊

屋根の鉛板が一夜にして忽然と消え始めた。ガソリンが、自動車のタンクからサイフォンで吸い取られた。物々交換はすでに取引のありふれた形態になっていたが、

出典:アダム・ファーガソン(2011), ハイパーインフレの悪夢, 新潮社, P178

原油・原材料価格が高騰する世界において、人々の考えることは今も昔も変わらないらしい。原油高が進む昨今、米国や欧州では、ガソリンの盗難が増加している。1920年代のドイツで発生したことが繰り返されている状態である。

最近は、ホースでガソリンを抜き出す盗難だけでなく、ガソリンタンクに穴をあけて盗み出す盗難まで発生しているようである。防止策としては、鍵のかかるガスキャップの取付と、車をガレージや人目の多いところに止めることが推奨されている。

人々が1920年から進歩していないことを知るとともに、歴史は繰り返される事を示し、歴史を振り返る事の重要性を物語る記述である。

家賃を上げることはできないが、多くの家主はとりあえず、自分たちの住宅ローンの支払いをわずかな負担で組ませることができた ~中略~ こういう状況下では、民間開発業者が新しい建物を建てることがまったくなくなってしまう。

出典:アダム・ファーガソン(2011), ハイパーインフレの悪夢, 新潮社, P196

お金の価値が下がり、借金の返済が軽くなる状況下。すでに借金をしている人にとっては好ましい状態であるが、お金の貸手にインセンティブが働きにくい状態になる。そうすると、新たな借金が組めない状態になり、信用の創造が機能しない状態になっていく。

また、それだけでなく、人件費、材料費が高騰し採算ラインが変動する状態では、建築のような長期間に及ぶプロジェクトをリスクを冒して実施するインセンティブが働かなくなってしまう。

経済活動において、物価の安定がいかに重要かを知る記述である。

最近の状況に当てはめると、新築の価格は人件費・材料費が高騰し、それにつられて中古の価格が上がっているように見える。金利が上昇・金融引き締めで銀行からの融資がつかない状態になるまで、価格高騰は続くのかもしれない。

また、少し状況は異なるが、人件費・材料費が高騰に加えて、サプライチェーンの混乱により、新車の供給が滞る中で、中古車価格が高騰したり、希少価値の高い腕時計が値上がりしていたりする。供給が滞るとすでに市場にある物の価値が上がっていく状態にあるようだ。

まとめ

インフレの初期段階では、現金を保有せず消費するインセンティブが働くため、消費が刺激され失業率は下がり、経済は活況であった。

しかし、インフレが激しさを増すと、目先の食料の確保が優先事項となり、デモや盗難が多発し社会が不安定になっていった。(ドイツのハイパーインフレ程ではないけれど、最近、海外では盗難やデモが増えてきており、これは今の状況と合致する部分がある。)

このような歴史を振り返ると、インフレ対策は、どの国においても、政権を握る与党の重要な課題となるだろう。

個人レベルに話を落とすと、下記のような点が重要だと思われる。

  • 頭脳労働に価値がなくなる可能性がある事を視野に入れておく。
  • 現金をインフレに強い資産へ転換する手段を確保しておく。
  • 貨幣価値が減価するため、借金をしている方が得になる。
  • その時点での稼ぐ力をつけておくことが重要。
  • 外貨を稼ぐ手段があると良い。

現在は、逆イールドが発生し景気後退が意識される状況にある。一般的に逆イールドが発生してから15か月後ぐらいでリセッションに入ると言われる。しかし、金融緩和や給付金によって、市場にお金が溢れかえって、わずかな利回りを求めて長期債が買われて金利が下がっている状態が過去と同じかというと違うようにも思える。更に言うと、逆イールドが発生してからも株価は高値を更新することが多いので、警戒しすぎるのも良くない。(失業率は完全雇用状態と言えるほど低い状態にあり、更なる雇用回復は期待できない状態にも見えるが、)足元の状況は、新規失業保険申請件数を見ると、雇用は強い状態にあり、原材料費や人件費の高騰で採算が合わなくなり事業を縮小するという兆候も見えない状態で、(収益の見通しを下方修正する企業がちらほらと存在するが、)経済は強そうに見える。

しかし、景気後退やインフレに備えて、スキルアップしたり、資産防衛策を考えておく事は重要だろう。逆イールドが発生してから15か月後ぐらいにリセッションに入るというのであれば、スキルアップの準備期間が15か月もあるのだから、新しい事にも挑戦できるだろう。

書籍から、いつくかパワーワードを紹介しましたが、他にもいろいろ印象的な文章があります。あまり、紹介しすぎるのも本書に悪いので、詳細は本書に譲りますが、本書の締めくくりの最後の1文もなかなかのパワーワードなので、気になった人は、書籍を読んでみてください。

インフレが進む世界で、一緒に生き残りましょう!
何かの参考になれば幸いです。では!

 

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