さらっと 銘柄紹介株式投資・雑記

より良い社会を実現する「ESG投資」と舞台裏

スポンサーリンク
さらっと 銘柄紹介
この記事は約12分で読めます。

より良い社会を実現する「ESG投資」と舞台裏

ESGとは? ESG投資とは?

最近、新聞やニュースなどで目にするESG。

ESGとは、Environment(環境)、 Social(社会)、 Governance(ガバナンス)の頭文字を取ったもので、企業は利益を生むための組織ではあるが「環境・社会・ガバナンス」に配慮して、企業を経営しようという流れである。

今までは、定量的な財務情報を材料に投資を行っていたが、ESGに対しての取り組み等、財務情報以外の情報も考慮して投資をするのがESG投資である。

日本では、2015年9月に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)国連の責任投資原則(PRI)へ署名したことがESG投資拡大の契機になったと言われている。

そして、ESGに配慮している組織の方が、結果として収益性が高かったり、株式のリターンが良かったり(もしくは遜色なかったり)もするという事で、投資家からも注目されている。

個人投資家としても、投資するなら、社会を良くするESGの評価項目を満たしている企業に投資したいし、機関投資家としても、説明が付き易いという面があり、近年、注目が集まってきているように思われる。


出典:PRI Annual Report

GPIFも署名した国連の責任投資原則(PRI)へ署名する機関投資家等は、年々増え続けている

年金等の巨額の資金を運用する機関投資家達がESGの評価を重視し、ESGに投資資金が向かうのだから、個人投資家としても無視できない流れだし、当然、企業としても、無視できない流れであろう。

社会としては、ESGの考え方が普及することで、環境問題等が改善され投資家としては、遜色ないリターンが期待でき企業としては、投資資金が集まってくるという事で、全体として、良い方向に向かっているように思われる。

似たような考え方にSDGsというのがある。

SDGsは、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)の略で2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載されている2030年までの国際目標の事である。

SDGsの国際目標は、持続可能な世界を実現するための「17の目標(ゴール)、169のターゲット、232の指標」から構成されている。

つまり、

SDGsが国際社会からの要請で企業が目指すべき方向性で、ESGが、SDGs等を推進する企業を投資家が評価する仕組み。

というところだろう。

具体的にESGではどのような項目が評価されているのかと言うと、下記の様な項目が評価の対象になっている。

ESGの評価とは?

ESG関連のETF・投資信託などが組成されているが、そこでは、下記の様な点が評価項目となっている。

  • Environment(環境)
    • 気候変動・水の安全保障・汚染と資源・生物多様性
  •  Social(社会)
    • 健康と安全・労働基準・人権と地域社会・顧客に対する責任
  • Governance(ガバナンス)
    • 腐敗防止・税の透明性・リスクマネジメント・企業統治

出典:FTSE Russell のESG Ratings の構造

では、これらの評価項目をチェックしたESG銘柄に投資するには、どうすれば良いのだろう?

いくつかのETFがあるので、紹介してみたい。

ESG投資するには?

ETFの大手といえば、BlackRock(iShares)とVanguardの2強である。

(シェアはBlackRock(シェア39%)、Vanguard(シェア25%)、StateStreet(16%)となっており、StateStreetはシェアを減らし続けている。)

BlackRock(iShares)とVanguardには、それぞれ、下記のようなESG関連のETFがある。

BlackRock ETF

  • iShares MSCI KLD 400 Social ETF(DSI
  • iShares ESG MSCI USA Leaders ETF(SUSL)
  • iShares MSCI USA ESG Select ETF(SUSA)

Vanguard ETF

  • Vanguard ESG U.S. Stock ETF (ESGV)
  • Vanguard ESG International Stock ETF (VSGX)

これらの投資信託に投資する事で、ESG関連銘柄に投資する事ができる。

では、具体的にどのような企業に投資をしているのか、DSIとESGVのポートフォリオを見てみよう。

iShares MSCI KLD 400 Social ETF(DSI)の投資先


出典:BlackRock HPより

BlackRock ETFであるDSIの場合、
Microsoftの割合が9.38%と結構大きくなっている。
GAFAの中では、AppleとAmazonが上位に無い点が特徴的である。
また、Teslaが上位に組み込まれているのが印象的。

Vanguard ESG U.S. Stock ETF (ESGV)の投資先


出典:Vanguard HPより

VanguardのETFのESGVの場合、
投資割合は分からないが、GAFAと同じくMicrosoftが並んでいる。
そして金融系のJPMが上位に組み込まれているのが印象的である。

どちらのポートフォリオも多少の特徴はあるが、ESGという大層な名前の割には、まぁ平凡なポートフォリオである。

次にリターンを比較してみよう。

例えば、S&P500に投資するVOOと、iShares MSCI USA ESG Select ETF(SUSA)のリターンを比較すると下記の通り。

S&P500 と ESG投資(SUSA)リターンの比較


出典:Yahoo! Finance

VOOとSUSAの1年間の推移

1年間の推移を見ると、ESG投資であるSUSAが5%程度上回っている
ESG投資は有効に見える。

しかし…


出典:Yahoo! Finance

VOOとSUSAの10年間の推移

10年間の推移を比べると、VOOに対してESG投資であるSUSAが下回っている期間が多い

結局は、どの期間を抽出するかで差異があるが、S&Pとほぼ遜色ないパフォーマンスになっているというのが概況であろう。

ここ1年間、ESGのパフォーマンスが良かったのは、ESG投資で敬遠される石油関連の銘柄のパフォーマンスが悪かったことが原因だと考えられる。従って、石油株が上昇するような景気回復局面ではESGのパフォーマンスがS&Pに対して劣後する可能性がある様に思われる。

ESG投資 握手券を買う人々

ココまでの記事を読んで、どこに投資しようか決まっただろうか?

「よりよい社会を作る為に、ESG投資をするんだ!SUSAを買うんだ!

「あまり変わらないなら、VOOに投資しよう!」

「直接、Microsoftに投資しよう!」

どれも良い投資だと思うんだけど、「握手券を買う」のは、ちょっと待って欲しい。

普通のブログや、投資信託を紹介している記事であれば、VOOと何本かのESGのETFをチャート比較して、過去のリターンから、これが良いかもしれません。みたいな結論になるのかもしれないけれど、このブログは他とは違うので、ここからが本題である。

今まで見た記事のなかで、気になった点はなかっただろうか?

前述した記事を再度掲載しよう。

例えば、ETF・投資信託の例

BlackRock ETF

  • iShares MSCI KLD 400 Social ETF(DSI)
  • iShares ESG MSCI USA Leaders ETF(SUSL)
  • iShares MSCI USA ESG Select ETF(SUSA)

Vanguard ETF

  • Vanguard ESG U.S. Stock ETF (ESGV)
  • Vanguard ESG International Stock ETF (VSGX)

ETFの商品名に、MSCIという企業名が何度も出てきているのが、気にならなかっただろうか?

このESGブームの陰で、儲けている人がいるのだ。

AKBのブームの陰で、仕掛け人が儲けているように、
ESGのブームの陰で、儲けている人がいるのだ。

それに気づかずにESGのETFを買うのは、AKBの握手券を買うカモのようなものである。(それはそれで幸せな生き方だったりもするのだけど…)

喩えがピンとこないかもしれないが、MSCIを中心に、ベンチマークの提供会社、ESGの格付け会社・調査会社について、説明をしてみたい。

ESGの格付け会社・調査会社 M&A Activities

出典:sustainability.comのレポートを加工したもの。

上の表は、ESGの格付け会社・調査会社のM&Aを整理したもので、色は、買収された企業で統一している。(例えば、先ほど紹介したiShares MSCI KLD 400 Social ETF(DSI)というETFにはMSCIが買収したKLDの会社名が入っていたりする。)

細かい企業名まで確認する必要はないが、大きな流れとして、M&Aが繰り返され、幾つかの色(企業)に集約されて来ていることが分かるだろう。

この業界では、買収などを経て、MSCIMorningstar(Sustainalytics)、Moody’sS&PBloombergReutersの6社が活躍している。(買収されたESGの調査会社は、英国、フランス、オランダ等、欧州の企業が多く、ESGは米国より欧州が進んでいたように見受けられる。)

ここで以前作成した業界地図っぽい資料を元にして説明したい。

この右下に赤枠に注目して欲しい。

格付け会社にはS&P(SPGI)、Moody’s(MCO)、Fitch(非上場)があり、ETFの大手は、VanguardとBlackRock(BLK)があり、 指数提供会社にはロンドン証券取引所(LSE)の子会社のFTSE(非上場)とモルガンスタンレーから独立したMSCIがある。

ESG関連の企業の買収には、指数提供会社のMSCIのほかに、格付け会社のSPGIやMCOが絡んできているのだ。恐らく、社債をESG関連の社債として格付けして発行するのにESGの知見が活躍するのであろう。

逆に考えると、指数提供会社であるMSCIが、2009年頃から、ESG評価機関・調査会社を買収し、ESG Ratingという新しい格付けの基準を作って、格付け会社の領域に踏み込んでいるとも言える。

ここで、これらの企業の株価の推移を見てみよう。

ESG 関連銘柄の株価


出典:Yahoo! Finance

チャートは上から順に下記の様になっている。

  • MSCI
  • Microsoft
  • S&P(会社)
  • Moody’s
  • Morningstar
  • SUSA(ESG投資)
  • VOO(S&P500指数)

先ほど、

ESGのETFを買うのは、AKBの握手券を買うカモのようなものである。

と述べたが、このチャートを見れば、幾分かは納得感があるのではないだろうか?

ESGもAKBもパフォーマンスは普通だが、その裏で仕掛け人が儲けているのだ。

投資家としては、ゴールドラッシュの時にツルハシやジーパンを売って儲けている人を見つけるような視点を持つべきだろう。

(これは過去の株価の推移であり、今後の推移を保証するものではないのでご注意を。)

まとめ

国際社会では、2030年をゴールとしてSDGsで定められた目標に向かい、企業は努力する事が求められている。

また、国連の責任投資原則(PRI)に署名する機関投資家は増加しており、SDGsを推進する企業を評価するESG投資の加速が見込まれる。

年金などの巨額の資金を運用する機関投資家の資金が、そこに流れ込んでいくことが想定されるため、無視できない流れであろう。

この時代の大きな潮流のなかで、高いESG格付け(Rating)を獲得し、投資資金を集める企業がある一方で、ESG格付け会社や調査機関を買収し、蓄積された知見で稼ぐ企業もある。

おまけ MSCIのリスク

MSCIが盤石かというと、リスクもある。

2012年10月にバンガードは、インデックスプロバイダーをMSCIからFTSEや他のベンチマークに切り替えると発表している。これを受けて、MSCIの株価は27%下落している。

このように、手数料の価格競争をするVanguardとBlackRock等の影響を受け、MSCIやFTSEの収益性も左右されるのだ。

そのような流れから、MSCIはESG格付けのような高付加価値のサービスを作り出し、差別化を進め、新たな収益源を作り出している状況である。近年のグリーンエネルギーなど、環境意識の高まりもあり、MSCIをはじめとするESG投資には春が訪れているように思われる。

おまけ MSCIの収益は実は・・・


出典:MSCI IRより

MSCIの収益の区分を見ると、Recurring subscriptionと記載されている。

実は、MSCIの収益は70%以上がSubscriptionの収益だったりする。

おまけ 補足

S&Pに連動する投資信託・ETFを自分も保有しています。個別の企業への投資より、安定性が望めるので良い投資先だと思います。インデックス投資を卑下するものではありません。普通に良いパフォーマンスだと思います。

おまけ ESGってバカげている。でも、必要。

ESGの考え方って、小学校の標語のように、企業が当然やるべき事を挙げているだけで、バカげているようにも思う。しかし、その当然ができていない会社があるのが実態だ。

最近では、中国のLuckin Coffeeが不正会計をしていたし、ドイツのWireCardも不正会計をしていた。日本では創業100年を越える東芝さえも不正会計をしていた。ガバナンスが機能していない状態だ。

当然の事を当然のように出来ていない会社があるわけだから、改めて第3者の機関が評価する需要があるのだろう。

個人的には違和感を覚えつつも、そのような事実を受け止めながら、ESG投資が必要とされる時代の流れを受け入れて、投資方針を考えるべきなのだろう。

ESGでは、石油関連の企業やタバコ関連の企業が軽視されがちだ。(元々、これらの企業には投資をしない方針なので、個人的には関係ないのだけど、)社会からも必要とされていて一時代を築いて来た企業だし、今も必要とされている企業に対して、扱いが酷いようにも思える。

まぁ、この様な流れは、昨日今日に始まった話でもないし、変わる企業は、既に変わっているし、変わらざるを得ないのだろう。逆風にある企業にとっては中々つらい状況だ。

おまけ MSCI MCO SPGI 財務諸表

最後に、MSCI,MCO,SPGIの財務諸表を掲載しておきます。ご参考に!

MSCI

MCO (Moody’s)

SPGI (S&P Global)

Morningstar

おまけ サムネイルの画像

このサムネイル、気づいただろうか?

実はESGの影がAKBになっていたりする。

AKBのようにブーム陰で儲けている人がいるよという暗喩したものである。

もう一点、ESGを囲んでいる円は、ESGのポートフォリオに上位に組み込まれている企業や、記事に出てきた企業名で作られていたりする。

コメント