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エコノミック・モート(経済的な堀) つよいビジネスって何だろう?

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エコノミック・モート(経済的な堀)  つよいビジネスって何だろう?

  • 企業を差別化する要因って何だろう?
  • 成長する強いビジネスって何だろう?

と考えて思い浮かべるのが、

ウォーレン・バフェットが広めたと言われる。

エコノミック・モート(経済的な堀)と言う考え方。

個々の言っている事は妥当だけど、
重複しているように見えるし、
何より、すんなりと頭に入って来ない。

  • この違和感は何か?
  • 強いビジネスとは何か?

理解を深めるために、モートを深掘りしてみた。

エコノミック・モートとは

エコノミック・モートとはウォーレン・バフェットによって命名された参入障壁となる競争優位性を示す概念。耐久性が高い優位性のことをワイドモート(広い堀)と言ったりする。

エコノミック・モートは以下の5つを示す。

(④⑤を合わせて4つと定義する場合もある。)

①Intangible Assets 無形資産・ブランド価値

ブランド、ロイヤリティ、特許、行政許可を持つもの。

例:ルイヴィトン(LVMH)の様なブランドビジネス。

例:フィリップモリスなどのタバコビジネス。

例:薬の特許・認可を持つヘルスケア。

②Switching Costs 乗り換えコスト

一度使い始めると簡単に乗り換えられないもの。

例:携帯電話、データベースなど、習熟やデータ移行が必要なもの。

③Net Work Effect ネットワーク効果

利用者が増えるほど価値を生むもの。

例:クレジットカードは、お店とお客の両者が増えると加速度的に相互のトランザクションが増える。

④Cost Advantages コスト優位性

コスト競争力が高くマージンが少ないため参入が難しいもの。

例:ウォルマート、百円ショップ等、クレジットカード。

⑤Efficient Scales 効率的な規模

大企業が参入するには市場が小さすぎたり、小企業が参入するには市場が大きすぎたり、規模の大きさが参入障壁となる。

今回は、大規模の企業が成長するモデルを考えたいため、大きいことが最適であると考え、「規模の経済性」とほぼ同義の意味で考えたい。

違和感について

5つのモートを見て、下記の様な違和感を感じた。

  • ネットワーク効果により規模の拡大できるのでは?
  • 効率的な規模によりコスト優位性が保てるのでは?
  • 高いロイヤリティがあれば乗り換えコストは考慮不要では?
  • ブランド価値により規模の拡大できるのでは?
  • ブランド価値により乗り換えコストは無視できるのでは?

要するに、重複している違和感を感じたのである。

この違和感を払拭するため、要素の関連性を図にしてみた。

モートの関連性


後で具体例を出して解説するので、ここでは大まかな概要を説明したい。
(番号・記号は上図と一致)

効率的な規模があるとコスト優位になる。
コスト優位性があると利用者が増えネットワーク効果が生まれる。
③④ネットワーク効果があると更に規模を拡大する動機が発生する。

次に、中心部。

  • ブランド価値(無形資産)があると、
    →a「お客から買われやすくなりコスト優位になる。」
    →b「顧客が集まりネットワーク効果を生む。」
    →c「規模を拡大する動機が発生する。」

 

  • a’コスト優位性があると、
  • b’ネットワーク効果があると、
  • c’規模が大きい(認知度が高い)と、
    →「ロイヤリティが高まる。(無形資産)」

上記のサイクルを順調に回している限り、お客のロイヤリティは高まり、サイクルが逆回転して、乗り換えが発生(乗り換えコスト)するのを防止できる。

これだけだとわかりにくいので、実際の企業で見てみよう。

VISAの場合


VISAの場合

加盟店・利用者を増やすと、ネットワーク効果によりネットワークの価値が高まる。価値が高まればブランド価値も高まり、顧客のロイヤリティも高まる。そして規模の拡大に繋がり、規模の経済性によりコスト優位性が更に増す。と言う様に、ネットワーク効果が企業のエンジンとなって、サイクルが回っている。

MasterCard等のクレジット会社も同じ。

BtoCを繋ぐ業態のビジネスの場合、利用者の増大によりネットワーク効果が強く働く。

ゾエティスの場合

ゾエティスの場合
動物用のワクチン・薬剤の特許・行政許可による参入障壁を築く。
これが、企業のエンジンとなって、サイクルが回っている。
ヘルスケア系は特許等でのモートが多い。

NIKEの場合

ナイキの場合
莫大な広告費を使ってブランドイメージを強化する。
有名人を使った広告や、奇抜で目を引く広告が多い。
これが、企業のエンジンとなって、サイクルが回っている。(以下、この記述は省略する。)

コストコの場合

コストコの場合
徹底したコスト削減によるコスト優位性。
信頼の低コスト・高品質の商品を提供することで高いロイヤリティの有料会員を保有する。

ULTAの場合

Ulta Beautyの場合
積極的な出店で規模を拡大。
複数のブランドを扱う業態を生かし、多数の有名人と提携する広告効果で集客する。
購買傾向を分析し顧客のロイヤリティーを高める。

GOOGLEの場合

Googleの場合
潤沢な研究開発費と高い技術力を武器にして圧倒的な規模で他者の参入を阻む。

エコノミックモートをどうやって築くのか?


エンジンとなるコアな要素や配分が違うが、順調に成長する企業はどの企業もこのサイクルが回っている様に思われる。

大まかな傾向を下記に記載する。

効率的な規模

新規出店 or M&Aを利用して規模を拡大。

ブランド・無形資産

長期的な信頼でロイヤリティを高める。

短期的には有名人を利用した広告を活用。

医療系は特許・認可。IT系は技術力で差別化。

コスト優位性

各企業の創意工夫が見られる項目。

SPA(自社で企画・製造・販売)、PB(プライベートブランド)、ロジスティクス(フルフィルメントセンター)等、事業範囲を垂直方向に拡大しSCMに注力する傾向が見られる。

ネットワーク効果

業態に依存する傾向が強い。

B to Cを繋ぐビジネスの場合、ネットワーク効果が強くなる傾向がある。

乗り換えコスト

作業・教育等の移行の手間があることにより、障壁が高くなる。

Economic Moatの図を見て感じる既視感


エコノミック・モートの関連性を整理して図にして感じたのは、似た図を見た様な既視感だった。記憶をたどって見ると、創業間もない2001年にジェフ・ベゾスが書いたと言われるAmazonのビジネスモデルである。

Amazonのビジネスモデル

創業まもない頃にベゾスが書いたとされる。

Amazon Fly Wheel効果」が右の図。

図に、モートの要素を白字で追記している。

多少強引ではあるが、下記の3つのモートの要素が見受けられる。

  • コスト優位性
  • 効率的な規模
  • ネットワーク効果

下記の2つの要素は含まれていない。

  • 無形資産・ブランド
  • スイッチングコスト

この2つの要素は、サイクルが順調に回っていれば、結果としてついて来るか、気にしなくて良いものである。(ブランド力は勝手について来るし、高いロイヤリティで集客ができていればスイッチングコストは気にする必要がない。)

まとめに入る前に、ここで、投資家の観点で注意点を記載しておきたい。

投資の観点でのエコノミック・モート

投資家としては、これらの情報を企業分析で活用する際、気を付けたいのは下記の3点である。

モート耐久性

投資の観点で見た時、エコノミック・モートと、その堀の耐久性。

新規の会社や、資金が潤沢なGAFAM等が参入してくる可能性はないのか?

と言う点に注意が必要である。

サイクルが回っているのか?

サイクルが順調に回っているのか?逆回転してスィッチングコストの歯止めが利かない状態になっていないか?

つまり、他の競合に市場を奪われていないか?

市場の成長性

参入している市場は、伸びている業界なのか?

衰退している業界だと、いくら立派な堀に囲まれていても、ジリ貧の篭城戦である。

まとめ

エコノミック・モートの要素の関連を図に整理すると、重複している様に見えた要素が綺麗に整理できた様に思う。

この図は、他の企業のビジネスモデルを理解する時に流用できる汎用性もあるし、個人的には、かなり満足度の高い出来栄えである。

エコノミック・モートを深掘りして図にしてみたら、Amazonのビジネスモデルに似ていたと言う話でした。

(参考)バリューチェーン

以前、書いた記事で、マイケル・ポーターのバリューチェーンを使いながら、「コストダウンと付加価値」の傾向を分析しています。この記事を併せて読んで貰えると、企業が、どうやって利益を出しているのか?と言う傾向について、更に理解が深まると思います。おすすめです。

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おまけ 魅力のあるモート

今回、モートを整理しながら、差別化の要因が何によって成り立っているのかを見てきたのだが、自分の傾向として、「技術による差別化」がコアなエンジンとなって成長している企業と、「ネットワーク効果」がエンジンになっている企業に魅力を感じる傾向がある様に思う。

おまけ Amazonフライホイール

良いビジネスって、大体このサイクルが回っているんだけど、特に、Amazonのフライホイールって言う考え方とエコノミック ・モートって言う考え方は親和性が高い様に思われる。

バフェットは理解できないビジネスには投資しないと言うポリシーでAmazonに投資しなかったけど、実は、ベゾスとバフェットって似た思考をしていたんじゃないかと思った。説明の仕方か、解釈の仕方を変えれば、バフェット がAmazonに投資した未来もあった様に思われる。

おまけ ベゾスの妻

冷静に考えると、「バフェット」より離婚して慰謝料を半分貰う「ベゾスの元妻」の方が投資家としては優秀な気がする。

おまけ 就職活動とモート

就活生の間で公務員が人気だったりするけど、これもエコノミック・モートと言うか、政府による参入障壁だよなぁ。でも、城の中でヌクヌクしていると堀の水が干上がって、障壁がなくなって、外に放り出されたら、生きていくのが大変だと思う。

そもそも、グロースしないので、投資対象にはならないね。

就活生にとっても、企業分析は重要。企業に人生を投資するわけだしね。

エコノミック・モートがあってグロースしているか?

って観点で就職する会社を分析すると良いかもね。

おまけ 出店拡大とモート

出店数を増やして規模を拡大すると売上は増加するんだけど、ロイヤリティが高めて行かないと、珍しくて来ていた人は離れてしまい、利益率が悪くなって、急に業績が悪くなったりするので注意が必要。「いきなりステーキ」と言うより「いきなり不景気」である。

おまけ サムネのアヒル

最初の画像、たまたまだけど、白の背景に赤字にしたら、経済誌のエコノミストの表紙みたいになって気に入った。(前回書いたコストコの素材を流用しただけだけど。)

実は、毎回、アヒルの位置に拘っていて、

今回は、お城のお堀でアイコンのアヒルが泳いでいるよ。

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